2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23654139
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
村上 洋 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 量子ビーム応用研究センター, 研究職 (50291092)
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Keywords | 細胞モデル / フレーリッヒ / マイクロ波 / 非平衡 / 非線形 |
Research Abstract |
フレーリッヒは、数十年前「細胞中ではマイクロ波領域にコヒーレント縦型電気振動が存在し、それが細胞の生体機構の基盤となっている」という、もし正しければ、生体が示す秩序性や効率の良さについて統一的な理解に導くようなモデルを提案した。本研究は細胞モデルとして逆ミセルを用いる。逆ミセルは油中で界面活性剤分子が境界を形成し内部にナノメートルスケールの微小水滴を含む。逆ミセル内の水の物性を詳細に調べるために、色素分子プローブの可視吸収スペクトルと水のマイクロ波吸収スペクトルの温度変化測定である。その結果、逆ミセルから水が流出する現象が明らかになった。特に、10nm程度以上の大きな粒径の逆ミセルでは、室温付近で水の流出が起こるとともに、そのとき、ピコ秒領域の水の運動が急激にスローダウンすることが分かった。このようなマイクロ波周波数領域の水の運動と逆ミセルの安定性の関係は、フレーリッヒの細胞モデルの検討のためだけでなく、細胞の崩壊の機構を考えるときに、重要な情報を与えるかもしれない。最終年度には、フェムト秒レーザーを光源としたマイクロ波ポンプ・紫外可視白色光プローブ時間分解分光装置の構築を実施した。非線形結晶ニオブ酸リチウムを用いたマイクロ波発生システムを構築し、数百μWの出力を得た。発生マイクロ波の時間波形計測のための光学系の構築を行い、単一サイクルのマイクロ波パルスが発生されていることを確認した。また、試料位置での集光スポットサイズは波長程度であり、試料位置までの光学系もほぼ最適化されていることが分かった。時間分解分光装置では、光ファイバー光学系を組み白色光パルス発生を得た。現在、色素分子導入逆ミセルを対象にして、マイクロ波照射により、逆ミセル内に誘起される効果を測定中であり、今後、蛋白質逆ミセルなどを対象にした実験を行い、フレーリッヒの細胞モデルの検証を行う。
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