2011 Fiscal Year Research-status Report
極低温リュードベリガス中における分子生成メカニズムの研究
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23654143
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
高峰 愛子 青山学院大学, 理工学部, 助教 (10462699)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | Rydberg原子 / 冷却原子 / 冷却分子 / 原子間相互作用 / 磁気光学トラップ |
Research Abstract |
当初は平成22年度中に完成する予定であった磁気光学トラップの製作が終了しなかったため、平成23年度も引き続き磁気光学トラップの開発を進めた。昨年度まで使用していた外部共振器型半導体レーザーのレーザー素子としてARコートを施していない普通のファブリーペロ型半導体レーザーを使用していたためか、オプティカルフィードバックが上手く動作していない事が判明した。そこで予定を変更し、この先の利便性なども見据え、DFBレーザーとARコートレーザーを購入し外部共振器並びに光学系を組み直した。また、リュードベリ原子を生成した際に電場を印加しシュタルク効果による原子準位シフトと原子間相互作用の変化を探るための電極の設計・作製を行った。更に、リュードベリ状態へ励起する際に磁気光学トラップの磁場をRydberg原子の寿命内という短い時間で切る必要があるため、高電流を高速にスイッチするためのスイッチング回路の設計・製作も行った。製作当初はスイッチングの際にスパイクノイズが乗ることが観測された。このようなノイズはいとも簡単にリュードベリ原子をイオン化してしまうため、スナバ回路の取り付け等によりスパイクノイズを消去し500μsで磁場電流をスイッチすることに成功した。今年度は磁気光学トラップ内に電極をインストールしていない状態で磁気光学トラップの光学系を構築・調整し、冷却ルビジウム原子捕獲のCCDカメラによる観測に成功した。また、冷却原子原子雲状態とトラップ条件の相関の大まかな把握を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成22年度中に完成する予定であった磁気光学トラップの製作が終了しなかったため、今年度も磁気光学トラップの開発にかなりの時間が割かれてしまった。その主な理由としては、昨年度からトラップ光源として使用していた外部共振器型半導体レーザーの動作不良である。昨年度まで使用していた外部共振器型半導体レーザーにARコートを施していない普通のファブリーペロ型半導体レーザーを使用していたためか、オプティカルフィードバックが上手く動作していない事が判明した。何種類もの半導体レーザーで試してみるも、発振するところを探すまでに多大な困難を有し、当研究室で学生が扱うことも考えると実用的でないと判断した。今後も長く使う事を見据えて、トラップ光としてDFBレーザー、リポンプ光用の半導体レーザーとしてARコート付きの半導体を購入して外部共振器並びに光学系を組み直した。以上の事に今年度の多くの時間を費やした。その後、冷却原子にシュタルク効果を与えるための磁気光学トラップ内の電極を設計・製作をしたが、第一弾では電極が少し曲がっていたためか冷却光のアライメントがなかなか上手くいかなかった。(合わせようとすると一部の光がけられてしまった。)そこで、電極を取り除いた状態でトラップを試したところうまくトラップすることに成功した。電極は新しいものを再度設計・製作した。他にも、前年度の時点で製作してあった磁気光学トラップの電流を高速にスイッチングする回路に非常に長い時間(数十ミリ秒)のスパイクノイズが乗っていたため、一から設計・製作をやり直してスパイクノイズを消去することにも時間を費やした。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定ではアルゴン原子のトラップに入る段階であったが、ひとまず今年度はルビジウム原子に絞り、まずは磁気光学トラップ条件と原子雲の状態との関係の詳細な把握を進め、磁気光学トラップ内に電極を配置し、同様な結果が得られるかを調べる。その後、ルビジウム原子を冷却した状態でのリュードベリ状態への励起、および冷却リュードベリルビジウム原子からの分子生成条件の探索を行う。原子間相互作用が大きいほど、観測スペクトルが原子様から分子に特有な複雑な構造のものになることが予想される。トラップ条件を精密に制御することで、そのスペクトルの変遷を調査する。申請者が所属する研究室にはYAG励起色素可変パルスレーザーがあるのでまずはそれを用いてリュードベリ状態への励起を試みるが、将来的にはきれいなガウシアンビームのレーザーを使用したいため、連続発振レーザーを手に入れるために半導体レーザー励起のSHGシステムを並行して開発する。SHGシステムを二台構築するには予算が足りないが、パルスレーザーの方では二色のレーザーを照射することができるので、主量子数が大きく異なる準位のリュードベリ原子を同時に用意することができる。それらからの分子生成が行われているかどうかをマイクロ波分光もしくはラマン分光から確認する。更に、電極間に微弱電場を生成することで高軌道角運動量状態を作り出し、それが原子間相互作用および分子生成へどのように影響を及ぼすかを探る。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費は主にリュードベリ状態への励起に用いる連続波レーザーの開発へ充てる。具体的にはファンダメンタル光である960 nm半導体レーザー、SHGのための光学結晶、テーパーアンプ、ミラー、波長板、ブレッドボード、光学素子ホルダ等である。ロック回路の部品も購入する予定である。他には消耗品として必要であるガスケット等の真空部品、ルビジウム原子のディスペンサー、光学部品、電子部品等を購入する。現在使用しているCCDカメラの感度が低いため、より性能の良いCCDカメラの購入も検討している。また、米国のヴァージニア大学Gallagher研究室へ一ヶ月赴き、研修および共同研究を行う予定である。年度末には国内学会へ参加する予定である。
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