2012 Fiscal Year Research-status Report
極低温リュードベリガス中における分子生成メカニズムの研究
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23654143
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
高峰 愛子 青山学院大学, 理工学部, 助教 (10462699)
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Keywords | Rydberg原子 / 冷却原子 / 冷却分子 / 原子間相互作用 / 磁気光学トラップ |
Research Abstract |
平成24年度は、磁気光学トラップされたルビジウム原子をリュードベリ状態へ励起するための480nmレーザー光源の設計および作製を中心に行った。まず、ファンダメンタル光である960nm半導体レーザー素子を使ったLittrow型の外部共振器型半導体レーザー(ECDL)の作製を完了し、その発振を確認した。480nmレーザーは、このECDLから得られる光をテーパーアンプレーザーダイオードを通して増幅させた後、ボウタイ型共振器中にあるppKTP結晶で擬似位相整合により第二次高調波発生(SHG)することで得られる。より高い効率で480nmレーザー光を得るために、ppKTP結晶中で必要なレーザービームのウエストサイズを見積もり、それを得るためのボウタイ型共振器の設計を完了した。設計ではリュードベリ状態励起へ必要最低限なパワー(~十数 mW)の10倍以上の強度のシングルモード光を得られる計算である。現在は実際に組立を行なっている途中であり、近々完成する見込みである。 また、米国のヴァージニア大学のGallagher研究室へ一ヶ月赴き、冷却リュードベリ原子の研究に携わった。そこで学んだ技術を生かし、帰国後本研究室の磁気光学トラップにも改良を加え、昨年度よりもトラップ原子数を増やし、かつ、安定に原子をトラップできるようになった。また、リュードベリ原子を生成した際に電場を印加しシュタルク効果により原子準位シフトと原子間相互作用の変化を探るための電極を真空チャンバー内に設置した状態での磁気光学トラップの観測にも成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度、今後の研究方策を変更せざるを得なくなったが、新たに立てた方策予定に関してはおおむね順調に進展したと評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は、まず、磁気光学トラップ中に冷却・捕獲した極低温ルビジウム原子へ480 nmのレーザー光を照射し、極低温リュードベリ原子の生成とその確認を行う。実績概要で示した480 nmSHGレーザーシステムの開発と並行し、YAG励起色素可変パルスレーザーを用いてリュードベリ原子の生成を行い、SHGシステムが完成した暁にはそれによる励起も行い、それらの比較を行う。以上に並行して、磁気トラップ条件を変えた時に冷却原子雲の諸特性パラメータがどのように変わるかも系統的に探る。 これらを組み合わせ、トラップ条件を精密に制御することで、原子間相互作用の大きさがどのように変化し、マイクロ波分光やラマン分光の観測スペクトルがどのように原子様から分子様へと変わるかを系統的に調べる。更に、パルスレーザーとSHGシステムによるレーザー二台を用いることによって2色のレーザーを照射することができるので、主量子数が異なる準位のリュードベリ原子からどのような分子状態が生成しうるかを探る。また、磁気光学トラップ内の電極間に微弱電場を生成することで高軌道角運動量状態を作り出し、それが原子間相互作用および分子生成へどのように影響を及ぼすかを探る。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費は、主に電子回路作製に必要な電子回路部品や真空部品といった消耗品や、年度末に学会へ参加する費用に充てる予定である。
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