2012 Fiscal Year Annual Research Report
冷却イオントラップによる分子イオンの振動回転基底状態の生成と検出
Project/Area Number |
23654144
|
Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
岡田 邦宏 上智大学, 理工学部, 准教授 (90311993)
|
Keywords | イオントラップ / 分子イオン / クーロン結晶 / 共同冷却 |
Research Abstract |
本研究の目的は冷却イオントラップ内でCa+イオンと分子イオンの混合クーロン結晶を生成し、共同冷却された分子イオンの振動回転基底状態の生成法を確立することである。特に(1)レーザー誘起反応を利用した冷却リニアイオントラップにおけるCa+, CaH+混合クーロン結晶の生成、(2)CaH+: 1 1Σ(v=0, J'') → 2 1Σ(v=1, J')振動回転遷移励起による蛍光観測、を目標とした。まず前年度に設計した冷却リニアイオントラップを製作し、極低温冷凍機(到達温度10K)への設置と動作確認を行った。レーザーアブレーション法によってCa+イオンを捕獲し、レーザー冷却実験を行ったところ、従来のイオントラップと同程度の大きさをもつクーロン結晶(最大イオン数:数1000個程度、セキュラー温度10mK以下)の生成を確認できた。また、冷却イオントラップ中において初めてCa+,CaH+混合クーロン結晶の生成に成功した。この時の環境温度は約50Kであり、CaH+の回転基底状態の占有率は約13%(室温では2%)、J = 0-3までの低回転状態を含めると約90%の占有率となる。そこで、前年度に準備した波長可変半導体レーザー(405nm)を冷却イオントラップ中に生成した混合クーロン結晶に照射し、理論計算によって予測された600nm付近の蛍光観測を試みた。これまで蛍光観測には至っていないものの、新たに製作した実験装置の動作確認と冷却イオントラップ中にける極低温CaH+イオンの生成に成功したことで、CaH+イオンの振動回転基底状態の生成と振動回転遷移分光を実現するための見通しが立った。今後、配線からの熱流入を抑制することでイオントラップを10K程度まで冷却し、分光用レーザーアライメントと蛍光検出系の最適化を行うことで、振動回転遷移分光によるCaH+の蛍光観測が可能と考えられる。
|
Research Products
(8 results)