2011 Fiscal Year Research-status Report
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23654146
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
今井 正幸 お茶の水女子大学, 大学院人間文化創成科学研究科, 教授 (60251485)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 自己駆動 / ベシクル / 人工鞭毛 / 化学刺激 / pH / 走化性 / マイクロインジェクション / 国際研究者交流 |
Research Abstract |
人工鞭毛により自己駆動するベシクル系の実現に向けて、次の研究を進めた。まず、人工鞭毛の基本となるベシクル表面からチューブ構造の成長を化学刺激により形成させる実験を勧めた。駆動力をチューブの螺旋運動により得るため、螺旋運動が認められているオレイン酸のチューブ状ベシクルを成長させる。そこで、安定なベシクルを形成する為の脂質(DOPC)とオレイン酸からなる2成分ベシクルを作成し、溶液のpHをチューブ状ベシクルが成長するpHに調整した。その結果ベシクル表面からのチューブの成長を確認した。また、外部からの化学刺激(pH刺激)によるベシクルの変形挙動を調べる為に、イオン性脂質(phosphatidylserine: PS)とDPPCからなる2成分膜でpH刺激による膜変形をpHに敏感な蛍光色素を用いてベシクル表面でのPHプロファイルとベシクル変形の同時測定により追跡した。pHの勾配により膜変形が誘起されている様子を定量的に捉える事に成功し、共同研究を行なっているフランス・パリ第6大学のAngelova、Fournierグループと協力して、その理論モデルを構築した。(Soft Matter誌 in press)更に、その実験を行なっている間に、DOPCベシクルがpH勾配に反応し、勾配方向に自走する現象(chemotaxis)を見出した。この様な化学物質の濃度勾配によって自走するベシクルの発見は、本研究の目的である化学刺激により自走するベシクルの最も基本的なモデル系であると考えられるので、人工鞭毛系と併せて、今後研究を展開することとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まず、螺旋運動をもたらす化学刺激によるベシクルの変形についてもそのモデル系の構築と定量的な評価および理論モデルの提出に成功した点は予想以上の進展である。また、そのモデル系の実験中で見出した、走化性をもつベシクルの発見は想定外の重要な発見であった。しかし、人工鞭毛の基本となるチューブ状ベシクルのベシクル表面からの生成には成功しているものの、螺旋運動の再現には至っていないて点が現時点である。この遅れは研究代表者の所属機関の異動があり、それによる研究時間の中断によるところが大きい。以上の結果を加味して、おおむね順調とした。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは、昨年度の研究で見出した走化性を持つベシクルを支配する物理の解明に焦点を当てる。これは人工鞭毛系の駆動力となるチューブ状ベシクルの螺旋運動を考えるときの、基本モデルとなるからである。昨年度、見出した化学刺激によるベシクル変形とこの走化性をベシクルを支配する物理を明らかにし、化学エネルギー(pH勾配)を用いて螺旋運動をするベシクルを開発へと繋げたい。その為に、研究グループを走化性をもつベシクルのグループと化学刺激によるベシクル変形のグループおよび螺旋運動するチューブ状ベシクルを開発するグループの3極体制で当初の目的達成に向けて研究を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の予算はおおよそ、100万円である。その多くは実験用の試薬、マイクロインジェクション用のピペット等の消耗品、および研究打ち合わせ旅費に使用する予定である。
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Research Products
(2 results)