2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23654147
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
笹井 理生 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30178628)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 国際情報交換アメリカ / 遺伝子ネットワーク / ES細胞 / 揺らぎ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、マウスES細胞のコア遺伝子と考えられているSox2、Oct4、Nanogに加えて、PrimitiveEndoderm(PrE)細胞、Trophectoderm(TE)細胞へ分化する過程で重要な遺伝子であるCdx2、Gata6、Gcnfを併せて、合計6つの遺伝子からなる遺伝子制御ネットワークのモデルを構築し、その動的な振る舞いを理論的に解析した。その結果に基づき、ES細胞の示すNanog発現の大きな揺らぎは、Nanog遺伝子を含むクロマチンのドメインがつくる転写可能な複合体構造の形成崩壊の際に生じる、時間スケールの遅い揺らぎによって説明可能であるという仮説を提唱した。さらに、この理論モデルから導かれるエピジェネティックランドスケープを定量的に計算し、Nanogの大きい揺らぎがES細胞で存在するとき、ランドスケープは実験で観測されているようにPrE細胞、TE細胞へのそれぞれの分化経路を持つ地形となるのに対し、Nanog遺伝子を含むクロマチンのドメインの構造揺らぎが速くNanog発現の揺らぎが小さいとき、分化経路が平均されて明確な経路の分岐が生じないことを示し、ES細胞の大きな揺らぎが分化経路の混乱を防ぐために必要であるという仮説を提唱した。 本研究は25年度で終了する予定であったが、25年度の研究により、染色体の動的揺らぎがES細胞の動的揺らぎと深く関わることが明らかになったため当初計画を変更し、染色体の動的揺らぎに対する解析をさらに深めることを目的として研究を26年度に延長した。26年度は、クロマチンドメインの構造揺らぎを表す数理モデルを構築し、ES細胞における遺伝子発現揺らぎとスイッチングにドメインの化学修飾状態、および構造状態の変化が及ぼす影響を統計物理学的な観点から議論した。
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