2012 Fiscal Year Research-status Report
超薄膜電気容量測定による臨界カシミール効果の直接観察
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23654154
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
深尾 浩次 立命館大学, 理工学部, 教授 (50189908)
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Keywords | 超薄膜 / 電気容量測定 / カシミール力 / 高分子ブレンド / 臨界点 / 相溶性 |
Research Abstract |
本研究では、秩序パラメータの熱揺らぎの空間相関長が発散する2成分ブレンド系の臨界点近傍で発生する臨界カシミール力の検出を行うために、超薄膜での電気容量測定技術を発展させた新たなシステムを確立する。そして、その技術の応用により、高分子超薄膜系でのガラス転移の特性長の直接観察への挑戦を行うことが目標であった。今年度はこれまでの実験を踏まえて、いくつかのブレンド系での電気容量測定をおこなった。1)臨界点が明確に存在するポリジメチルシロキサン(PDMS)とポリエチルメチルシロキサン(PEMS)のブレンドを用いてコンデンサーを作成し、電気容量を広い温度範囲で測定した。その結果、臨界組成で臨界温度へ向かって温度を変化させると、電気容量が異常に変化することが観測された。この変化は臨界点での特異な体積変化を捉えている可能性があるが、詳細は今後の解析を待たねばならない。2)PDMS/PEMS以外のブレンド系として、ポリスチレン(PS)とポリ2クロロスチレン(P2CS)系でのガラス転移挙動を調べた。とくに、2種類の高分子の積層膜を作成し、その界面での相溶性を明らかにし、界面にトラップされた超薄膜領域で臨界点にチャレンジすることを視野に入れている。これまでに、界面でのガラス転移挙動はバルクとは異なっていることが明らかになっており、臨界現象との関係を明らかにすることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上述の研究経過に示したように、高分子相溶性ブレンド液体の電気容量測定は可能となった。今後は、さらに、超薄膜液体フィルムを作成し、その電気容量測定へと挑戦する必要がある。ここが第2の難所であり、その測定の成否に本研究の目的達成の可能性が託されている。これまでの研究では、高分子相溶性ブレンド液体の電気容量測定で、体積変化の測定を可能とするためには、メタルの真空蒸着で電極を作成する必要があった。しかし、液体表面上に電気的な短絡を起こすことなく、電極を作成することは研究開始前の予想よりも困難であった。そのため、この難関をクリアするために、予想以上に時間がかかった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、次の点を中心に研究を進めていく。 1) PDMS/PEMSブレンド系と、PS/P2CSブレンド系の超薄膜での電気容量測定に挑戦し、臨界点近傍でのカシミール力の検出を目指す。 2) PS/P2CS多層膜系において、10nmの厚みのP2CS層を上下に様々な厚みのPS膜をスタックさせ、薄膜内の様々な位置でのαダイナミクスを調べ、薄膜内での動的不均一性を調べる。このような動的不均一性とこの2成分系での臨界点近傍での電気容量異常性との関係を調べる。 3) これまでの測定結果で公表可能な部分に関しては、学会等での発表を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は当初計画よりも液体状態での電気容量測定に困難が生じたため、その回避に時間を要し、一部の測定を次年度に繰り越す必要が生じた。それに伴い、成果報告も年度を跨ぐ必要が生じ、未使用額が発生した。今年度は以下のように研究費を使用する。 1)物件費: 高分子試料代 15.3万円 2)旅費: 研究成果発表旅費 17万円
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