2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23654158
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
藤 浩明 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (40207519)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 地震災害・予測 / 津波 / 地磁気 |
Research Abstract |
本研究で言う「海底観測所」とは,西太平洋で稼働中の海底長期電磁場観測ステーション(SeaFloor ElectroMagnetic Station: SFEMS)を指す。本研究では,これらの観測ステーションに,米国やEU諸国の先進技術を導入してオンライン・リアルタイム化を図る。 平成23年度は,北西太平洋海盆のNWP点で稼働中のSFEMSをまず回収し,その代替機として津波計を付加した新型SFEMSを敷設する事に成功した。また,回収したSFEMSにも津波計を付加し,DART用クライアントセンサーのプロトタイプ化を試みた。これはSFEMSを現行のDARTシステムの海底部として置換する為には必須の改良である。また,このNWP点の保守に用いた研究船は,その公募中最上位の成績で採択されていた為,東日本太平洋沖地震の直後であったにも関わらず,様々な紆余曲折はあったものの,基本的にはこちらが希望する日程で観測が実施できた結果,この地震により発生した巨大津波による電磁場変化を含む貴重な観測データが取得でき,本研究の進展に大きく寄与した。平成23年度中に再応募した翌平成24年度の研究船共同利用も,今年度に引き続き最上位ランクで採択されており,平成24年度の海域観測実施の目途が立った。 さらに平成23年度は,メルボルンで開催されたIUGGにおいて本海底観測所の現状報告を行った所,EUの海洋底科学分野の取りまとめ役の一人であるローマ国立火山・地球物理学研究所のA. DeSantis教授から協力の申し出があり,彼の招きで年度末の三月にスペインで開かれたEUの「深海底先端科学会議」に出席し,欧州の海洋底科学研究者との接点を構築できた。これにより,米国だけでなくEU諸国の先進技術を導入する見通しが開けた。 これらの海域観測・装置開発及びEUとの連携は,連携研究者との緊密な協力の下実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
装置開発においては,津波計を付加したSFEMSの開発に成功し,DARTシステムなど既存の全球リアルタイム津波監視システムのクライアント・センサーとして要求される必要条件を充たす事ができた。また,国際協力の面では,取得した津波電磁場のデータ解析を引き続きNOAAのM.C. Nair氏と共同で実施すると共に,新たにイタリアのA. DeSantis氏の仲介によりEU諸国との接点が構築できた。これにより,米国だけでなくEU諸国においても,本研究で開発した新型SFEMSの試験観測が実施できる展望が開けた。 しかし,本研究の目的であるDARTシステム海底部センサーの電磁気化には,試験観測の成功といった実績が要求されており,その為にも平成24年度には是非とも海域観測を成功させる必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は,津波計と電位磁力計による海底同時観測を成功させ,両者の比較照合により,電磁場センサーを既存の津波監視システムに組み込む事の損得を,データに則して客観的に示す事に集中する。平成23年度の観測では,津波計がまだ付加されていない海底長期電磁場観測ステーションにより東日本太平洋沖地震の際に発生した電磁場変化を検出する事に成功したが,その予備的解析結果によれば,津波起源磁場の鉛直成分が周辺のDARTシステムが捉えた波高と非常に高い相関を持つ事が示された。平成24年度は,データの前処理に時間を掛けて,生データからの津波電磁場の抽出に留意したデータ解析を行い,津波起源磁場の鉛直成分が津波波高のproxyとしてどう利用できるかを検証したい。 これらの結果を,最終的には,米国地球物理学連合の秋季大会で成果報告し,同時にNOAA関係者との研究打ち合わせ会合をサンフランシスコで開催する。また,米国だけでなくEU諸国にも電磁津波計の受入先を求めて国際協力をより一層推進する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究実績の概要欄に記した通り,平成23年度末に欧州へ出張してEUの海洋底科学研究者との接点を構築したが,その海外旅費は本科研費で充当する予定であった。しかし,幸いな事に,他経費でこの海外出張旅費を賄う事ができたため,平成23年度分基金に剰余金が発生した。 平成24年度は,前年度剰余分と併せて,本研究費を次の費目に充当する。(1)海域観測を実施するのに必要な旅費及び消耗品費,(2)成果発表を行う為の国内及び海外旅費(国内では10月に札幌で開催予定の地球電磁気・地球惑星圏学会秋季大会,海外では12月にサンフランシスコで開催予定の米国地球物理学連合秋季大会に出席し講演する),(3)連携研究者と研究打ち合わせを行う為の国内旅費,(4)取得した海底電磁場生時系列から異常値を判定・抽出,また,傾斜・方位・温度補正等のデータ解析用前処理を実施する為の謝金。前年度の剰余分は,主に(4)に充当する予定である。
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Research Products
(3 results)