2012 Fiscal Year Research-status Report
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23654169
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
羽田 亨 九州大学, 総合理工学研究科(研究院), 教授 (30218490)
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Keywords | 衝撃波統計加速 / 宇宙線 / 非ガウス統計 |
Research Abstract |
○前年度までに引き続き、レヴィ歩行統計に従う宇宙線の衝撃波統計加速の計算機シミュレーションを行った。粒子運動は、停滞と歩行を交互に繰り返すとし、ベキ型分布に従うランダム変数を生成するルーチンを用いて、停滞および歩行のそれぞれの時間スケールをベキ則で与えた。宇宙線の散乱として、散乱のたびに飛翔方向を3次元的にランダムとする強拡散と、磁気流体波動によるピッチ角拡散をモデル化する弱拡散の場合の相違について議論した。 ○衝撃波統計加速過程により加速される宇宙線の統計を時間の関数として調べ、フラックスのベキ則、空間分布、加速時間についての議論を行った。前年度までに得られた結果に加え、宇宙線分布関数に対する時間発展方程式である拡散対流方程式をフラクタル微分を用いて書き換えた、フラクタル拡散微分方程式の解析を行った。この方程式は限られた場合には解析的な評価ができるが、一般には数値的な取扱いのみが可能である。得られた方程式の数値解を求めるためのプログラムを作成しテスト計算を行った。 ○複数の衝撃波が同時に存在する場合の衝撃波統計加速過程について、計算機シミュレーションおよび拡散対流方程式の解析により議論を行った。衝撃波が1つの場合とは本質的に異なり、衝撃波が複数存在する系では、宇宙線分布関数は拡散係数に依存することを示した。また、分布関数は衝撃波の数に応じて複数のベキ乗部分からなるが、これらの漸近解を解析的に求め、これが計算機シミュレーションの結果をよく説明することを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請時の研究計画では、平成24年度に行う項目として、非ガウス的粒子拡散による宇宙線の衝撃波統計加速のための計算機シミュレーションの実行、強拡散(散乱毎に等散乱とするモデル)とピッチ角拡散モデルとの比較、宇宙線飛翔に関するパラメータ・サーベイ、またフラクタル拡散対流方程式の構築と数値計算による解の探索をあげたが、平成24年度中に、これらの殆どを実際にすべて遂行した。フラクタル拡散対流方程式の数値解法に関しては、解を求めるには至っていないが、フラクタル拡散方程式の数値解は求めることができるようになった。また、申請時の計画にはなかった、複数衝撃波による衝撃波統計加速について研究を発展させ、テスト粒子計算および理論モデルによって、いくつかの全く新しい結果を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
○非ガウス拡散を特徴づけるさまざまなパラメータ領域にわたって、テスト粒子計算を引き続き行う。超拡散、古典拡散、亜拡散の場合に対し、フラックスのベキ則、加速時間、宇宙線の空間分布等の諸統計量を詳しく評価し、宇宙線のレヴィ歩行を指定する2つのパラメータとの関連を明らかにする。 ○提案しているフラクタル拡散対流方程式の数値解法を完成させる。フラクタル微分の階数がある特別な値の場合、対流がない場合(フラクタル拡散方程式)の既存の解と比較することにより、コードチェックを行う。さらに、フラクタル拡散対流方程式の数値解析により得られた結果をテスト粒子計算結果と比較検討する。 ○複数衝撃波による衝撃波統計加速について、引き続き議論する。 ○研究を総括する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費は、主として調査研究および研究発表旅費(国内および外国旅費)として使用予定である。
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