2011 Fiscal Year Research-status Report
高速進展する断層ラプチャー先端の応力場と破砕現象の解明
Project/Area Number |
23654170
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
西川 治 秋田大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (90375220)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大槻 憲四郎 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 名誉教授 (70004497)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 断層 / 固着すべり / ラプチャー / 粉砕 / 応力場 / ガス圧式三軸圧縮試験 |
Research Abstract |
本研究では、地震性の固着すべりが発生する際のラプチャーの進展速度と局所的な応力場を明らかにする目的で、地殻物質を用いた高速摩擦すべり実験をガス圧式三軸圧縮試験機で行っている。脆性的な性質をもつ石英単結晶を用いた実験では、大きな固着すべりとともに、すべり面の周りで激しい粉砕現象が起きることがこれまでの研究から明らかにされていた。23年度の研究では、破砕組織の詳細な観察を行い、この現象は断層のずれにともなうせん断変形によるものではなく、断層ラプチャー先端部が通過するきわめて短い時間に生じる局所的な応力場の変化が原因であることが示唆された。石英多結晶体やガブロなどを組み合わせた実験試料でも同様の粉砕組織が形成されたことから、この現象は地殻を構成する結晶質岩では普遍的であり、その形成メカニズムを解明し新しい断層破砕帯発達モデルを提示することは、地質学および地震学に対するインパクトが大きく非常に重要であるという認識に至った。しかしながら、これまでの実験システムでは、観測点を多くとることが出来ず、固着すべり発生時に生じるすべり面近傍の歪場の変化を精確にとらえることが難しかった。そこで、これを大幅に改良し、5MHzのサンプリング間隔で最大10チャンネルを同時観測出来る観測システムを構築した。これにより、観測時の空間分解能が大幅に改善され、断層ラプチャーの開始点、進展速度と方向をより精確に決定できるようになる。予備実験を通して、大量のデータを安定して記録出来ていることやチャンネルの同期がとられていることが確認された。 実験と天然の破砕現象と比較するために、断層の周りに粉砕岩が報告されているサンアンドレアス断層と有馬高槻構造線で産状の観察と試料採取を行った。その結果、両者の組織の特徴は非常に似ていることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ガス圧発生装置のオーバーホールなどのメンテナンスが行なわれ、三軸圧縮試験機の状態が非常に良好な状態に保たれた。そのため、特に大きなトラブルに見舞われることなく、予定通り実験計画を遂行できた。
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Strategy for Future Research Activity |
改良された実験システムで、固着すべり時のすべり面近傍の歪場の変化を明らかにする。石英単結晶、石英多結晶体やガブロ等の試料を用い、鏡面研磨したプレカット面ですべらせる。実験条件は最大封圧180 MPa常温で、5MHz最大10チャンネルですべり面付近の歪の変化を観測する。取得したデータを解析して、断層ラプチャーの開始点、進展速度とその方向を決定するとともに、ラプチャー先端部の局所的歪場を捉える。さらに、破砕組織との関係を検討し、断層破砕帯発達モデルの構築を試みる。得られた成果は、国内外の学会で発表し国際誌に論文を掲載する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
23年度までに実験システムの改良はほぼ完成しているので、研究費は、一部の消耗品を除き、主として実験、野外調査および成果発表のための旅費に使用する。
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Research Products
(1 results)