2011 Fiscal Year Research-status Report
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23654172
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
千木良 雅弘 京都大学, 防災研究所, 教授 (00293960)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松四 雄騎 京都大学, 防災研究所, 准教授 (90596438)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 地質学 / 地形学 / テクトニクス |
Research Abstract |
地形解析と古地形面の認定抽出:吉野川(紀ノ川),紀伊山地を南北に縦断して流れる熊野川(十津川)を対象として,10m メッシュの数値地形データ(DEM)を用いて,地理情報システム(GIS)上で地形解析を行った。具体的には,地表面の傾斜分布図,水系図,遷急線分布図を作成し,それと空中写真判読によって地形判読を行い,地形の不連続性と重力変形斜面に注目して古地形面と新しい地形面とを認定した.その結果,古地形面は熊野川の上流から中流部にかけて広く分布していることが明らかになった。また,熊野川上流部の支流がいずれも遷急点を持つことが明らかになり,その縦断面から本流の旧流路断面を復元することができた。現地調査:地形解析結果をもとに,現地調査を行い,地形の確認を行うとともに,地形と地質との対応を検討し,局所的な地質構造に起因するものでない,広域的な相対的侵食基準面の変化による遷急点と遷急線を抽出した.岩石の風化状況,河床堆積物の有無と性状を調査し,また,岩石の風化程度と,古地形面との関係を分析した.宇宙線由来核種による古地形面の年代決定:上述した古地形面の河床堆積物を異なる深さから採取し,室内処理によって石英を抽出し,その10Beを測定した.そして,その場所での10Be の生成量を与えて,河床堆積物が堆積してからの年代を決定した.その結果,150mの下刻が約3万年間に生じたことが予察的に明らかになった。以上の結果は,典型的な西南日本の付加体である紀伊山地の地形発達-隆起と侵食-に新たな地形をもたらすものであり,また,河川縦断面の変化と侵食速度とから,隆起速度分布解明に一歩近づいたものである。 また,2011年台風12号によって発生した深層崩壊の発生した箇所は,上述の古地形面の縁にほぼ含まれており,深層崩壊の発生場も長期的な地形発達の面から理解できることが予察的に明らかになったといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載した研究計画に沿って順調に研究は進行しており,西南日本外帯に古地形面が広く広がっていることが明らかになり,その地形面の年代の測定が可能であること,また,古地形面内の旧河川の侵食速度の推定が可能であることが予察的に明らかになった。その結果,研究の目的である「西南日本外帯の典型的な付加体で隆起・削剥履歴を明らかにし,隆起量分布および速度を見積もること」に着実に近づくことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度に得られた成果に基づき,調査域を紀伊山地全体に広げ,古地形の分布状況を明らかにし,地質調査を行って,地形面と主要断層,大峰花崗岩体,接触変成帯と地形面との関係を分析し,地形に対する地質構造の影響を評価する.さらに,古地形面の試料を採取し,古地形面の年代を明らかにする.また,熊野川上流の支流の縦断面と遷急点の分布から,古地形面内の旧本流流路を推定し,その離水年代を求め,遷急点の後退速度を明らかにし,それに基づいて広い範囲の侵食速度,さらには隆起速度を求めるロジックを構築する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度は野外調査に比べて相対的に室内業務が多くなったため,24年度に調査旅費を用いて現地調査を多く実施することになった。現地調査旅費および研究成果発表旅費として約50万円,現地調査用具および実験機器と試薬に約50万円,資料整理補助のための謝金約10万円,その他レンタカー代などに約10万円使用予定である。
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