2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23654172
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
千木良 雅弘 京都大学, 防災研究所, 教授 (00293960)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松四 雄騎 京都大学, 防災研究所, 准教授 (90596438)
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Keywords | 隆起 / 侵食 / 遷急点 / 山体重力変形 |
Research Abstract |
古地形面の分布とその開析過程:熊野川上流の天川流域の詳細DEMデータ(1mメッシュ)を入手し,地形解析を進め,また,現地調査によって地形の地質制御について検討した。その結果,以下のことが明らかになってきた。天川流域では,現在の河床から100-200m高い位置に斜面の傾斜が変わる遷急線が広く分布していること。そして,それに対応するように,天川支流にも広く遷急点が分布していることも明らかになった。 古地形面と地質構造との関係:現地調査によれば,遷急点の明瞭に認められる支流は,上流の流域の狭い支流と,侵食に対する抵抗性の大きな岩石が支流の侵食を受けている支流であった。これらの岩石は,緑色岩やチャート,酸性凝灰岩,ホルンフェルスであり,これらが下流からの遷急点の遡及を阻んでいると解される。一方,このような岩石がない場合には,遷急点は下流から上流に遡及するものの,次第に傾斜を減じて消滅してしまうものと考えられる。さらに,上流が狭い支流では,河川の浸食力が弱いため,本流を遡及してきた遷急点は支流の合流点から大きく遡及できないと解された。以上の成果によって,天川流域に分布する遷急線よりも高標高にある地形面は古地形面であり,それを新たに河川が侵食していることが明らかになった。さらに,古地形面の縁に大規模な山体重力変形が生じていること,つまり,古地形面の開析が初期的には重力変形によって大規模に進むことが明らかになった。熊野川下流部の熊野酸性岩地域の地形地質調査を行い,高標高部に古い地形面が残存し,そこで深層風化が進んでいることを明らかにした。 下刻量の推定:河川による下刻量の推定のために,大台ケ原山でサンプリングを行った。また,天川現河床よりも100m程度高い位置の旧河床で礫を探したが年代測定に用いることのできる資料は発見できなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに,古地形面が紀伊山地全体に広がっていることが明らかになってきており,さらに,熊野川上流部の天川流域では,現地調査と詳細DEMデータから,遷急点の分布と古地形面との関係が明らかになってきている。これは当初期待していたとおりの成果であり,今後地形面の年代データを増やし,また,地形解析を進めることにより,西南日本外帯の代表的な例として,紀伊山地の隆起・侵食過程を解明できることが期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
天川流域にある古地形面を下刻した河川の旧流路を復元し,さらに新しい年代測定データを取得し,遷急点の後退速度,および,河川の侵食速度を明らかにする。さらに,熊野川中流部と下流部の熊野酸性岩類分布地での古地形面の年代測定に取り組み,熊野川流域全体の隆起削剥過程を明らかにする。 研究結果を学会で発表するとともに,研究論文としてとりまとめる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
現地調査旅費,論文発表のための学会参加旅費,室内実験用の器具薬品購入,論文投稿および英文校正用費用に用いる。
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