2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23654172
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
千木良 雅弘 京都大学, 防災研究所, 教授 (00293960)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松四 雄騎 京都大学, 防災研究所, 准教授 (90596438)
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Keywords | 隆起 / 侵食 / 遷急点 / 山体重力変形 |
Research Abstract |
平成24年度に得られた成果に基づき,熊野川上流の天川において古地形面を流れていた河床を復元し,それと現在の河床とを比較して,下刻量を推定した.古地形面内の旧河床は,本流では遷急点の後退とともにすでに失われた場合でも,流域の小さな支流には残存していた.特に緑色岩やチャートなど,侵食に対する抵抗性の強い岩石が存在する場合には,残存状況が良かった。これらの遷急点上方の河床縦断面を本流側に外挿し,平衡河川であったと想定される本流の旧河床を復元することができた.その結果,古天川本流河床は上下流方向25㎞にわたって現在の河床よりも約150m高い位置にあり,これだけの深さが下刻量であることがわかった。この下刻は,遷急点の後退によってもたらされたと考えられるが,河床の年代値が上流部の1ヵ所で約3万年と求められたのみで,下流部での年代が得られなかったため,残念ながら遷急点の後退速度は明らかにできなかった。地域の隆起速度は下刻速度に近いと考えられ,少なくとも3万年に150mという下刻速度は,本地域の隆起速度が非常に早いことを示唆している。このように早い下刻速度と遷急線の形成が後半に分布する山体重力変形の大きな誘因の一つであることもわかった。また,本研究の考え方は,紀伊山地に広く適用できるものとの見通が得られた。 本研究成果は,論文に成果としてとりまとめるとともに,単著「深層崩壊-どこが崩れるのか」に記し,社会還元をはかった。
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