2011 Fiscal Year Research-status Report
蛇紋岩の残留磁化の起源:新たな古地磁気学研究対象になるか?
Project/Area Number |
23654173
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
乙藤 洋一郎 神戸大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (90160895)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宇野 康司 岡山大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (10510745)
佐藤 鋭一 神戸大学, 学内共同利用施設等, 助教 (40609848)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | 蛇紋岩 / 古地磁気学 / 岩石磁気学 |
Research Abstract |
蛇紋岩の磁化獲得の様子を明らかにするために、まず日本列島に分布する蛇紋岩の試料採取からはじめた。東北日本の阿武隈山地周辺には、昨年3月11日の地震・津波災害にともなう、福島第一原子力発電所事故により、放射性物質が降下したために、この地域での試料採取は今年度の目的からはずした。そこで西南日本に分布する蛇紋岩を今年度の試料採取対象とした。そのうち、(a)飛騨外縁帯に分布する岩体と(b)大江山帯の岩体に着目して岩石採取を行った。(a)飛騨外縁帯:(1)八方尾根に分布する岩体、(2)岩岳に分布する岩体、(3)糸魚川の歌谷川上流に分布する岩体、(4)青海地域に分布する岩体、(5)九頭竜湖岸に分布する岩体に注目し、分布域の調査を9月に行った。5箇所で、51個の蛇紋岩を採取した。(b)大江山帯:宮津市南方大江山に分布する岩体に注目し、分布域の調査を12月に行い、2ヶ所で20個を採取した。今年度採取した岩石から、残留磁化測定用の試料を整形中である。今年度以前に、上越帯の川場変成帯に隣接した蛇紋岩について、残留磁化測定を行った。正帯磁・逆帯磁等の帯磁方向など多様な残留磁化方向で特徴付けられることがわかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3年間の目的に対しては、20%程度の達成度であるが、今年度の目的に関しては70%ほど達成している。蛇紋岩の残留磁化の起源をさぐることが研究の目的であり、具体的に次の二つの質問に研究の焦点をあてている。(a)超塩基性岩類が水と反応し、蛇紋石と磁鉄鉱が生成される蛇紋岩化作用を受けたときに初生磁化を獲得するのか?(b)蛇紋岩化作用後に再磁化をするのか?そのふたつに解答を与えることができれ、さらに蛇紋岩の残留磁化起源がわかれば、蛇紋岩の残留磁化方向は、地球磁場とテクトニクスの研究に大いに貢献する。 *まず研究に必要なことは、的確な研究材料を採取することである。今年度は西南日本の飛騨外縁帯と大江山帯の2地域から蛇紋岩を採取できた。試料採取においては、西南日本では夏の集中豪雨にともなう各所の林道の閉鎖で、試料採取にやや不満を残した。東北日本では地震・津波災害に伴う原発事故のために、まったく試料採取ができなかった。東北日本は、今後の放射線量の低下に期待している。残留磁化測定は、すでに開始しており、初生磁化を蛇紋岩が保持しているか否か、現在解析中である。岩石磁気までには、研究はまだ及んでいない。
|
Strategy for Future Research Activity |
最初の研究目的は、磁気異常をつくる蛇紋岩の磁化の起源に解答を与えることである。[A] 蛇紋岩の磁化は、残留磁化なのかあるいは誘導磁化なのか、いずれかを判定する。[B] 蛇紋岩の磁化のなかの残留磁化の寄与を見積もる。そして、[C] 蛇紋岩に残留磁化があれば、残留磁化の獲得時期を探る。 その際に、つぎの4つの獲得時期の可能性に対して、解答を求める。(1)蛇紋岩化作用が最初におこったときの残留磁化、(2)蛇紋岩化作用が、間歇的に何度かあったならば、複合した残留磁化、(3)最後におこった蛇紋岩化作用のときに獲得した残留磁化、(4)最後におこった蛇紋岩化作用によってつくられた蛇紋岩が、その後に二次的に獲得した残留磁化まずは、残留磁化を採取した蛇紋岩岩石試料から求め、それぞれに特徴的な残留磁化方向をあきらかにすることから始まる。特徴的な残留磁化が見つかった後に、岩石磁気的解析が始まる。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1. 蛇紋岩料採取をおこなう。次の2地域を試料採取対象地域とする。(a) 飛騨外縁帯 八方尾根地域周辺の蛇紋岩、(b) 阿武隈帯 日立変成帯の蛇紋岩 2. 古地磁気学をおこなう。西南日本弧(飛騨外縁帯・大江山帯)・東北日本弧’日立変成帯)さらに両孤の間にある上越帯に分布する蛇紋岩を研究対象にして、残留磁化を測定する。磁化方向から、磁化獲得時期を推定する。3. 年代測定を行う。蛇紋岩の原岩が見つかった場合は、岡山理科大学においてK-Ar法で岩石の生成年代を測定する。4. 蛇紋岩の岩石磁気学的性質を知るために、次の実験・測定を行う。磁化率測定, 磁化率の温度変化、IRM獲得実験、IRM熱消磁、ARM獲得実験、飽和磁化の温度変化などの岩石磁気の基礎実験。この実験を通して、磁化を担っている鉱物を同定する。5. 顕微鏡観察を行い、蛇紋岩化の進行過程をさぐる。
|