2012 Fiscal Year Research-status Report
蛇紋岩の残留磁化の起源:新たな古地磁気学研究対象になるか?
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23654173
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
乙藤 洋一郎 神戸大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (90160895)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宇野 康司 岡山大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (10510745)
佐藤 鋭一 神戸大学, 学内共同利用施設等, 助教 (40609848)
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Keywords | 蛇紋岩 / 蛇紋岩化作用 / 古地磁気 |
Research Abstract |
1. 岩石試料採取: 西南日本の飛騨外縁帯に分布する蛇紋岩を、2012年6月23日に大江山において3か所で計24個を採取した。一方東北日本に分布する蛇紋岩の採取を2013年1月8/9日に行った。阿武隈山地の日立変成岩の玉簾変成岩・西堂平変成岩と赤沢層の間の断層に貫入した蛇紋岩を、2か所で16個を採取した。現在残留磁化・岩石磁気の測定を行っている。 2. 残留磁化測定:2011・12年度に飛騨外縁帯の白馬岩岳スキー場・親不知歌谷上流・九頭竜湖岸・大江山で採取した蛇紋岩の残留磁化を測定した。【大江山】交流消磁に対しては、方向は変えずに、磁化強度は徐々に減少していった。交流消磁を施した試料の残留磁化の平均値は偏角48.5度、伏角64.3度となった。この値は30-35Maの西南日本の残留磁化方向である偏角65.9度、伏角48.6度とおおむね平行であり、同じような時計回り偏角を示した。大江山の蛇紋岩は、現在の磁化ではなく、西南日本が時計回り回転運動をする以前に磁化を獲得したと結論した。【白馬・親不知】消磁する前の残留磁化方向が、いろんな方向を示した。交流消磁を施すと、三つの方向に、残留磁化方向は収束した。(1)現在の地磁気方向あるいは地心双極子磁場方向、(2)偏角120度、伏角68度、そして(3)偏角180度、伏角30度、であった。1番目のように最近に磁化を獲得した蛇紋岩も存在することが分かった。2番目の方向には正・逆の両帯磁を示す岩石が見つかった。この方向は、信頼のおける古地磁気を示している可能性があり、西南日本の回転以前獲得されたかもしれない。 3. 結論:残留磁化の方向から、残留磁化を近年獲得した蛇紋岩と、西南日本の回転以前に獲得した蛇紋岩の2種類がある可能性が出てきた。これは、蛇紋岩化作用がおこった時期が、場所によって異なっていることを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1. 試料採取に関しては、やや達成感に乏しい。とくに東北日本弧での岩石採取が実行できなかった。これは、日立変成岩中の蛇紋岩の採取を計画するも、福島原発による山地の放射能汚染が危惧され、実行を躊躇するものであったことによる。一方西南日本の飛騨外縁帯の試料採取に関しては、2011年の梅雨あけの西南日本の洪水の影響で、露頭に近づくのが難しかったので、満足いく試料採取ができなかった。 2. 残留磁化測定:試料採取をした岩石中、2013年で採取した日立変成岩中の蛇紋岩をのぞき、すべて終了している
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Strategy for Future Research Activity |
1. 東北日本の日立変成岩中の蛇紋岩の採取を敢行する。 2. 蛇紋岩の岩石磁気をおこなう;熱磁気分析、帯磁率測定、ヒステレシス測定 3. 反射顕微鏡による蛇紋岩の成長の観察 4. 蛇紋岩成長と残留磁化方向の関連性の吟味
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1. 試料採取旅費:東北日本の日立変成岩中の蛇紋岩の採取を敢行する。 2. 蛇紋岩の岩石磁気測定のための旅費;熱磁気分析、帯磁率測定、ヒステレシス測定を高知コアセンターで行う。 3. 試料カプセル作成費用 4. 反射顕微鏡による蛇紋岩の成長の観察のための薄片作成費用 5. 成果発表旅費
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