2012 Fiscal Year Research-status Report
火山噴出物中の揮発性成分定量分析に関する新手法の開発
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23654182
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
安田 敦 東京大学, 地震研究所, 准教授 (70222354)
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Keywords | 含水量 / マグマ / ガラス包有物 / FTIR / 斑晶 |
Research Abstract |
測定データの質の向上の目的で前年度に導入した高感度検出器について,スペクトルの特徴の把握と検量線作成をおこなった.高感度検出器の導入によって,シグナルーノイズ比がおよそ5倍向上した. これによって,前年度までは,30ミクロンx30ミクロンサイズの試料に対しておよそ25分かけてデータ収集をおこなっていたが,同様な質のデータを20ミクロンx20ミクロンサイズの試料で12分間で取得できるようになった.天然試料の場合,小さな試料のほうが圧倒的に多いので,この技術の拡張によって分析可能な天然試料の範囲を大きく拡大することができた.また,分析に要する時間を半減することができたので,たくさんの試料を効率良く分析できるようになった. 前年度に開発した斑晶ガラス包有物分析用の斑晶反射補正方法(カンラン石用)について,斜長石,輝石,石英についても同じプログラムを使えるようにプログラムを拡張した.この結果,天然試料の多くの斑晶ガラス包有物で,この補正プログラムが利用可能になった.この補正プログラムの適用によって,斑晶が分析領域に少々入っていても,分析精度を下げずに水の定量が行える. 反射法の有効性を確認するため,天然試料の分析にも取り組んだ.前年度に引き続き,2011 年1月の霧島火山の噴火の苦鉄質側マグマ由来のかんらん石斑晶中に含まれるガラス包有物を分析し,このマグマの由来した深度を検討した.また,富士宝永火山噴出物の輝石斑晶中のガラス包有物の分析を行い,珪長質マグマの深度について初めて見積もりを与えることに成功した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実施時期の多少の前後はあるが,3年間の全体計画の中で予定した作業について,およそ2/3にあたる研究を完了した.顕微反射分光法による含水量定量については,検量線の作成が玄武岩質マグマから流紋岩質マグマまで整備することが終わり,手法としてはほほ確立したといえる段階にある.今後は天然試料への適用ついて,様々な試料を分析してノウハウの蓄積をはかるとともに,普及にむけての活動を開始する予定である.一方,二酸化炭素の定量分析については,天然試料において十分な濃度を持った試料が少ないこともあり,未だに合成試料における検量線作成の段階で留まっている.最終年度では,数百ppmの含有量があることが報告されている天然試料の幾つかについて,分析を試みる予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
水の定量については,手法を広く公開することを目指して,ノイズリダクションの操作やスペクトルのピーク値の自動読取等のデータ解析の方法について,よりいっそうの自動化をはかる.試料表面の平滑度の分析結果への影響の評価など,試料の前処理について技術レベルの異なる多数の利用者が生産するデータの精度について検討する.以上によって,天然試料の分析環境を整備する.二酸化炭素の定量分析については,数百ppmの含有量があることが報告されている天然試料の幾つかについて分析を試み,手法の有効性を確認したい. 以上の研究結果をとりまとめ,成果の発表を行う.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
手法の有効性の確認のために天然試料の分析を行うことを計画している.多量の天然試料の分析を試みるため,試料の前処理をおこなう実験補助者を雇用する予定である.この研究計画の実施のために,試料採取のための旅費,分析補助者の雇用のための謝金,成果発表のための旅費と印刷費を計上する.
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Research Products
(4 results)