2012 Fiscal Year Research-status Report
準安定炭酸塩鉱物の水溶液中における相転移挙動のその場分光観察
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23654184
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
福士 圭介 金沢大学, 環日本海域環境研究センター, 助教 (90444207)
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Keywords | モノハイドロカルサイト |
Research Abstract |
モノハイドロカルサイト (CaCO3・H2O: MHC) は地球表層環境では非常にめずらしい準安定炭酸塩鉱物である. MHCは主に塩湖での産出が認められている(Fukushi et al., 2011). MHCの溶解度は, 無水カルシウム炭酸塩鉱物の安定相であるカルサイトやアラゴナイトよりも1桁高いのみであり, しばしば塩湖で観察されるジプサムに比べると3桁も低い. なぜ低い溶解度を有するMHCが, 高い塩濃度の環境で生成するのかは明らかになっていない. また, MHCの結晶構造にMgは入らないにもかかわらず, 室内実験および天然での産状から, MHCの生成には溶液中にMgの存在が必要であることが示されている(Fukushi et al., 2011 ; Kimura and Koga, 2011). MHC生成におけるMgの重要性の影響に取り組む研究は今までに行われてきた(Kimura and Koga, 2011). しかし, 天然の系でのMHCの生成条件を解明するためには, Ca2+- Mg2+- CO32-の相互の寄与を理解することが重要である. 本研究では, MHCの生成条件を明らかにすることおよびMHC生成におけるMgの役割を明らかにするために, CaCl2、MgCl2、Na2CO3溶液からの系統的な炭酸塩鉱物生成実験を行った. その結果,MHCの生成には含水Mg炭酸塩鉱物との共生が必要であること, MHC生成におけるMgの役割は非晶質から脱水することを妨げ, 生成したMHCの表面をMg炭酸塩鉱物が覆うことでさらなる安定相への変質を防ぐことを明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度の予定は、(1)前年までに確立したその場変質観察システムを用いて5、15、25および35℃の条件で変質実験を行う。(2)不純物を添加した系における変質挙動観察および速度の測定。であった。一方、前年までの研究から、MHCの生成におよぼすMgの存在が、MHCの変質速度に影響を与えると考えられた。そこで本年度は当初の予定を中断して、MHCの生成条件の検討に注力した。その結果、MHCの生成には含水Mg炭酸塩鉱物との共生が必要であること、 MHC生成におけるMgの役割は非晶質から脱水することを妨げ、生成したMHCの表面をMg炭酸塩鉱物が覆うことでさらなる安定相への変質を防ぐことを明らかにした。以上の検討は当初の予定外であったが、安定性におよぼすMgの本質的な寄与を明らかにできた点は、本研究の目的を達成するために不可欠である。したがって研究はおおむね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に開発したその場赤外分光システムは鉱物の生成から変質まで鉱物種の変化をその場で測定することができる。そこで、さまざまなCa2+- Mg2+- CO32-濃度条件からの炭酸塩鉱物の生成および変質過程をその場赤外分光システムにより観察する。初期溶液組成の違いにより、鉱物種の変遷がどのように変化するかを明らかにする。その場赤外分光システムでは鉱物種の同定がうまくいかない場合には、経時的に試料を採取し、固体の粉末X線回折分析を併用する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
実験に使用する薬品やガスおよび分光結晶などの消耗品および、成果報告のための学会発表に使用する。設備備品購入の予定はない。
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