2012 Fiscal Year Research-status Report
沈み込み帯での炭素循環新情報発信へ:微少量グラファイトの局所炭素同位体比分析
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23654185
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
森下 知晃 金沢大学, 自然システム学系, 教授 (80334746)
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Keywords | 炭素循環 / 炭素同位体 / マントル / 沈み込み帯 / 局所分析 / 米国 |
Research Abstract |
本年度は昨年度までに構築した局所炭素同位体比測定方法について,新たな標準試料を入手したため,これまで使用していた標準試料と新しい標準試料間の測定差について検討した。その結果,旧標準試料と新標準試料間では,分析値に大きな差は認められず,測定の正確差を証明する一つのデータを得ることができた。一方で,旧標準試料と比較すると,新標準試料の方がデータの精密さが良く,これは,新標準試料の試料状態が良いためであると判断した。 上記の検討後,天然の炭質物を含む試料について測定を開始した。その結果,測定値に大きなばらつきが出る試料と,比較的安定した測定値がでる試料があることがわかった。そこで,いずれの試料に関しても,超高空間分解能走査型電子顕微鏡を使用して,測定領域の観察を行った結果,測定値が安定しない試料に関しては,炭質物と同時に数ミクロンスケールのケイ酸塩鉱物が含まれていることがわかった。そして,シリカ計測量と同位体組成間に相関があることから,不均質試料に関しては正しい値が出ていないことが明らかとなったため,この分析方法,試料への対応について検討する必要がでてきた。 安定した値が出た試料に関しては,予察的な成因の考察を行い,ひすい輝岩,グラファイトを含むケイ質脈を含むかんらん岩捕獲岩について検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は,これまで見過ごされてきた沈み込み帯における炭素循環について,天然試料中の炭質物に着目して,局所炭素同位体分析手法を構築し,適応して検討することを目的としている。 (1)局所炭素同位体分析手法に関しては,今年度の成果によってこれからしばらくは対応できる量の安定した標準試料を入手し,検討できた結果,ほぼ測定方法の構築は完成したといえる。今後は,測定試料に対応した状態での標準試料を使い分けるなどの検討が必要であるが,一定の世界レベルの分析は可能であると判断している。 (2)天然試料分析においては,広域変成作用,接触変成作用を受けた変成岩試料およびひすい輝岩,マントル起源捕獲岩について検討した。前者2つの関係の試料に関しては,炭質物中の不均質に混合しているケイ酸塩鉱物の存在によって正しい値が出ていない可能性が高く,今後の検討が必要である。後者二つの試料に関しては,予察的な結果が出ており,それぞれの形成場所での炭質物の起源について検討が進められている。しかしながら,引き続き試料の測定を重ねて,検討を進める必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
安定したデータを取得するためには,微小領域といえど均質な炭質物からなる分析領域の確保が決定的に重要であることから,より均質な炭質物を含む試料に対しての分析が必要である。また,安定したデータを予察的に得られてた試料に対しても,よりデータの精度を高めるために,複数回の測定が必要である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
新標準試料を得ることができたために,旧標準試料との測定差について検討する必要が出て来たため,実際の天然試料について測定する時間が短くなったことに加え,マシンタイムの調整が申請者および受け入れ研究機関の間の両方の関係で十分に確保できなかった。今後は,引き続き測定値を増やすために,ハワイ大との共同研究を進めて,測定時間の効率化をはかり,炭質物の起源とその循環プロセスについての解明を行う予定である。これらの結果をもとに,国際研究専門雑誌に論文の投稿を行う。
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