2011 Fiscal Year Research-status Report
ナノビーム分析技術を駆使したダイヤモンドの新成因に係わる物質科学的検証
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23654192
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
日高 洋 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (10208770)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 国際研究者交流 / セントルイス / ストラスブール / 天然原子炉 / ダイヤモンド |
Research Abstract |
高エネルギー粒子の炭質物への照射による転移によってダイヤモンドが形成するという可能性を示唆するカミンスキー仮説を検証する一つの方法として,天然原子炉試料から採取された天然有機物中にダイヤモンド成分の存在の有無を探ることが本研究の目的である。フランス国立科学研究センタ―表層地球化学研究所と連携し,同研究所にて,有機物を多量に含む試料の選択,酸試薬を用いた処理の前処理を施すことにより,天然有機物の濃集フラクションの収集を行った。これらの試料について,ワシントン大学甘利教授の協力のもと,さらに詳細な化学処理による主要天然有機物の分離を行った後,ストークスの法則に基づいて考案された天然有機物濃集物質からダイヤモンドを分離する手法(Amari et al., 1994)を用いてダイヤモンドが濃集すると期待されるフラクションの回収を行った。ダイヤモンドは1332cm-1に強く鋭いラマンバンドを生じることから,回収フラクションの微粒子の集合体について顕微レーザーラマン分光法による1332cm-1近傍の波数領域の二次元マッピング観察を行った。回収フラクションは主要天然有機物が十分に分離されていると言えず,化学処理後の未反応物質が無視できないほどの量で残っているが,ラマンスペクトルの情報からは回収フラクションの複数の微粒子中にダイヤモンド成分と認識できる1μm以下の微小領域が複数点あることが確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は試料依存性が高いものであるが,フランス国立科学研究センタ―の協力により,他では入手不可能な実験試料を得ることができたため現在までの研究目的達成度は順調と言える。天然原子炉試料は通常の地質学的試料と比較して数十万~数千万倍以上の高エネルギー粒子の被照射を経験していたと考えられるため,同試料を本研究に使用することができたのは大きな利点である。米ワシントン大学甘利教授からの情報提供により,天然有機物試料からダイヤモンド粒子の有無を確認するに至るまでの試料の前処理,分離・濃集の過程に関する一連の手法を確立することができたことも今後の研究を円滑に進めるうえで非常に有意義であった。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度の結果を踏まえ,今後は試料の化学処理,分離・濃縮に関する一連の工程についてさらに改善・改良を検討し,未反応物質の除去の効率化,回収ダイヤモンドフラクションの高純度化を図る。分離・濃縮後の試料について顕微ラマン分光と透過型電子顕微鏡(TEM)による2つの手法からダイヤモンド微粒子を同定することを予定している。本研究の実験試料である個々の微粒子のほとんどは1mm以下の粒径であり,その個々の微粒子の中でさらにダイヤモンドとして存在していると思われる領域は1μm以下とさらに微小であるため,分析試料の固定方法などを含め,ラマン分析とTEM分析を円滑に行う方法を工夫する必要がある。ラマン分析については顕微レーザーラマン分光計に新たに導入した高速マッピングシステムが有効に使えることがわかったため,TEM分析の予備的な観察手法として効率よく使用していく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
フランス国立科学研究センタ―の協力を得て前年度入手した以外の研究試料について,次年度の早い時期に本研究代表者が同センタ―を短期訪問し,現地で適切に前処理を施した試料を再度入手することを計画している。試料の化学処理,分離・濃縮に関して,技術的な情報等を提供し,協力していただいている米ワシントン大学の甘利教授を広島大学に招聘し,一連の工程について高効率化,改良による高純度化を計るために共同で実験を実施することを計画している。本研究で得られた研究成果について本研究代表者が関連国際会議等で発表することを予定している。上記目的のための調査研究旅費に加え,試料の化学処理操作に必要とされる試薬,器具等の消耗品の購入を計画している。
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Research Products
(3 results)