2011 Fiscal Year Research-status Report
ミズゴケの貯水細胞水を化石水に用いる新古気候指標の提案
Project/Area Number |
23654193
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
赤木 右 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (80184076)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ミズゴケ / 化石水 / 酸素・水素同位体比 / 気候情報 |
Research Abstract |
過去一万年以上にわたり堆積し、世界の中・高緯度地域で度々泥炭層を形成するミズゴケは、枝葉表面、その枝葉中の透明細胞、茎のレトルト細胞等に水分子を強く保持し、ミズゴケの重量の20倍以上の水を保持できることが知られている(坂口、1989)。ミズゴケの堆積層を構成する高層湿原の水は天水より供給されるため、もしもミズゴケが一万年間にわたって水を保持し続けるならば、その水の酸素・水素同位体比から生育時の気温および乾湿度を読み取ることができる。申請研究は、以上のことをミズゴケ保持水に世界で初めて応用する。水の水素同位体比測定法のための還元装置の作成 水の還元装置を作製し、安定な同位体比が得られるようにチューニングを行った。還元カラムはより容易に再現性の高いデータが得られる様にデザインに改良を加え、再現性の高い装置が完成した。トリチウムの測定による水分子の停滞の程度の調査 スゥエーデンの共同研究者と連絡をとり、500mlの搾取水について、トリチウム測定を行った。その結果、トリチウムは少なくとも50cmの深度にまで到達していることが確認された。泥炭層中のミズゴケ保持水と滞留水の酸素および水素同位体組成を比較 ミズゴケ堆積層に貯留する水の同位体的特徴を明らかにするために、ミズゴケ貯留水を、ミズゴケへの保持の程度により、容易に抽出される水(EEW)、強く保持されている水(SBW)、その後蒸留によって抽出される水(DW)の3画分に分け、さらにその場に供給される天水について、水素および酸素の同位体比を測定した。その結果とトリチウムの測定の結果を照らし合わせて、搾取水の拡散、移流などの挙動についてモデル化を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
発案当初は、比較的容易に絞り出すことのできる水が化石水であると考えていたが、それはトリチウムの測定により否定された。現在はさらに強く保持されている水を蒸留により取り出して、それが化石水であることをトリチウム測定によって確認することにした。しかし、そのためにはサンプリングが必要であるが、スェーデンにおいて冬期の凍結期を迎え、春季を待っている段階である。また、蒸留法によって水を抽出するためには処理能力の高い蒸留装置が必要となり、この開発に2ヶ月を要した。
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Strategy for Future Research Activity |
現在方針を変更して、絞り出して採取できる水については水循環に関する考察を行うだけにとどめ、今後は、蒸留法によって抽出した水のみを化石水としての可能性を追求することにした。具体的には、その水のトリチウム測定と北アイルランド、スゥエーデン試料の蒸留水の酸素、水素同位体比の鉛直プロファィルの完成に最も優先的に取り組む。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度、共同研究者の関係で実現しなかった試料採取のための海外旅行を早期(5月中)に行う。(500千円)同位体比測定のための消耗品に20万円が必要である。(200千円)解析および論文作成のためのデスクトップコンピュータを購入する。(200千円)国内の学会に参加し、成果の発表を行う。(100千円)
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Research Products
(4 results)