2013 Fiscal Year Annual Research Report
ミズゴケの貯水細胞水を化石水に用いる新古気候指標の提案
Project/Area Number |
23654193
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
赤木 右 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (80184076)
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Keywords | ミズゴケ / 泥炭 / 保持水 / 酸素同位体比 / 水素同位体比 |
Research Abstract |
ミズゴケの高い保水能力を利用し、ミズゴケ堆積物から過去の天水の化石水を検索することが本研究の目的であった。そのため、ミズゴケ保持水を、搾取水と、搾取後蒸留して得られた蒸留水に分けた。二種類の水は保持の程度の強弱を反映すると考えられる。前年度までに得られたこれらのミズゴケ保持水の示す水素および酸素同位体比のデータには、次のようないくつかの解釈の困難な特徴が得られていた。保持の程度の弱い搾取水は酸素の同位体比は大きくなるのに対し、水素の同位体比には大きな変化は見られなかった。一方、保持の程度の強い蒸留水は水素の同位体比が搾取水に比べ小さく、水素、酸素とも大きな変動が見られた。またトリチウムの濃度は、搾取水、蒸留水ともに、深さ15cm付近で最大値を示し、保持の程度の弱いと考えられる搾取水の方が大きかった。今年度は、この同位体比の解釈および論文の執筆を行った。 トリチウムの同位体比に基づく考察から、トリチウムの腐食化に伴う選択的離脱および水素の鉛直方向の高い流動性が示された。保持水の示す酸素水素同位体比について、いくつかの可能性を考えた結果、以下の解釈に到達した。搾取水については蒸発および凍結に伴う同位体効果に加え、酸素に対し、水素のより大きな拡散性・交換性により、水素の同位体比の変化が均一になっていると解釈した。一方、蒸留水については、植物の腐食化に伴う同位体交換反応の可能性が高いと判断した。これらの結果は、残念ながら、化石水の保持の検索を目指した当初の計画に沿わないものであるが、泥炭地の水門学にとって貴重なデータと考えられる。
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