2011 Fiscal Year Research-status Report
電子とのハイブリッド加速を用いたレーザー陽子ビーム生成
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23654208
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
三浦 永祐 独立行政法人産業技術総合研究所, エネルギー技術研究部門, 主任研究員 (10358070)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 高性能レーザー / プラズマ / 量子ビーム / レーザープラズマ加速 / 陽子ビーム |
Research Abstract |
本研究は、レーザープラズマ加速を用いて高エネルギー電子ビームを発生し、その電子群を陰極としてレーザー照射薄膜ターゲットの裏面との間に電場を形成し、陽子を加速するレーザー陽子ビーム生成新手法の原理を実証することを目的としている。 本手法では、薄膜ターゲットへのレーザー照射で裏面に放射される電子が形成する電場よりも、レーザープラズマ加速で発生する電子ビームが形成する電場が支配的であることが必要である。そのためには、高エネルギーで、電荷量が高く、発散角の小さな、エネルギーの揃った準単色電子ビームが必要となる。まず、陰極を形成する準単色電子ビームを安定に発生することを試みた。エネルギー750mJ、パルス幅50fsのチタンサファイアレーザーパルスを長さ2mmのヘリウムガスジェットに照射して電子ビームを発生した。プラズマの電子密度が1.3E+19 cm-3の時に、ピークエネルギーが50~100MeV、単色ピークの電荷量が10pC程度、発散角が10mrad程度の準単色電子ビームが得られた。電子ビームのエネルギースペクトルをシングルショットで観測して準単色電子ビーム発生の安定性を評価した。10pC程度の電荷量を持つ準単色電子ビームを90%程度の高い確率で得ることに成功した。 固体飛跡検出器CR39を積層して用い、エネルギー損失法によって陽子ビームのエネルギー分析を行うため、検出器の設計に着手した。モンテカルロシミュレーションを用いて陽子のエネルギー阻止能を評価した。エネルギー3MeVの陽子の飛程は200μm程度であり、1MeV程度のエネルギー分解能を得るには、100μm程度のCR39を積層する必要があることがわかった。 陽子を発生する薄膜ターゲットの照射系、薄膜ターゲットの位置調整装置ならびに位置監視装置の設計を行った。その一部を完成させ、陽子ビーム生成実験に向けた準備を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年、発生した震災により実験に用いるチタンサファイアレーザー装置が影響を受けた。光軸のずれが予想以上に大きく、その調整に時間を要した。2ビームのうちの1ビーム(主ビーム)しか実験に利用できず、陽子の加速電場の陰極を形成する準単色電子ビームの安定発生を確立するにとどまり、第2ビームを薄膜ターゲットに照射しての陽子発生、2ビームを用いた統合的な陽子ビーム生成実験を実施できなかった。しかし、陰極を形成する準単色電子ビームの安定発生の確立、薄膜ターゲット照射系の設計、陽子ビーム検出器の設計等、陽子ビーム生成実験に向けた準備を着実に進めることはできた。個々には重要な成果を上げることができたが、全体として見れば、進展がやや遅れていると判断せざるを得ない。
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Strategy for Future Research Activity |
当面の課題は、薄膜ターゲットを照射し陽子を発生するレーザー装置の第2ビームを調整し、2ビームを用いた統合的陽子ビーム生成実験を実施することである。次年度はこの調整を早急に行い、2レーザーパルスをガスジェット、薄膜ターゲットに同期照射し、陽子ビーム生成実験を行う。レーザーパルスをガスジェットに照射しレーザープラズマ加速で発生する高エネルギー電子ビームの有無で、発生する陽子ビームのエネルギーを比較する。また、2レーザーパルス間の遅延時間により電子ビームの薄膜ターゲットへの入射タイミングを変化させ、発生する陽子ビームエネルギーの電子ビーム入射タイミング依存性を調べる。これらにより加速電場を形成する電子ビームの効果を明らかにし、本提案手法の原理実証を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上述の様に、震災の影響で薄膜ターゲットを照射する第2ビームの調整を完了できなかったため、その照射系を構築し、陽子発生、統合的陽子ビーム生成実験には至らなかった。レーザー装置を動作させ、ビームを実際に用いて光学部品の配置、薄膜ターゲット駆動系設置等を行う方が効率的であるので、照射系の構築に関しては設計のみにとどめ物品の購入を次年度に行うことにした。そのため、この部分に充当する予定であった研究費を繰り越すこととした。次年度は、この照射系の構築に必要な物品の購入、陽子ビームの検出器(CR-39、ラジオクロミックフィルム等)、エネルギー分析装置、陽子を発生する薄膜ターゲット等の陽子ビーム生成実験に必要な物品の購入を中心に研究費を使用する。
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Research Products
(1 results)