2012 Fiscal Year Annual Research Report
マトリックス単離-振動スペクトルの第一原理シミュレーション
Project/Area Number |
23655001
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
武次 徹也 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (90280932)
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Keywords | 希ガス化合物 / マトリックス効果 / 振動分光 / モンテカルロ |
Research Abstract |
「希ガスマトリックス単離法」のマトリックス効果に焦点をあて、希ガス化合物HXeClの振動分光定数に対する理論計算を行った。希ガス原子が分光測定結果に及ぼす影響は通常無視できるほど小さいと仮定されているが、希ガス化合物では希ガス原子の結合による振動数シフトと周囲の希ガスマトリックス環境の効果を考慮する必要がある。希ガスはXe>Kr>Neの順で分極率が大きくHXeCl と希ガス原子間の相互作用も同じ順序となるが、実験で測定されたH-Xe 伸縮振動数の大きさはKr>Xe>Ne マトリックスの順となり、この不一致の原因を相互作用の観点から説明することは難しい。本研究では希ガスマトリックス環境を露わに考慮し、HXeCl およびRgBeO (Rg=Ar, Xe)の振動数に与える影響について定量的に考察した。分子振動を量子自由度、周囲の希ガス原子を古典自由度として量子-古典混合ハミルトニアンを定義し、必要となるポテンシャルはCCSD(T)計算の結果を解析関数にfitting して求めた。量子自由度を含む項については基準座標を用いたPO-DVR 法によりマトリックス環境下での振動エネルギー準位を求め、モンテカルロシミュレーションにより振動スペクトルを得た。希ガスマトリックス環境下でのH-Xe 伸縮振動数は、気相中と比べてNe, Kr, Xe マトリックス中でそれぞれ52, 111, 83 cm-1 ブルーシフトした。実験ではNe マトリックスを基準とした相対値はKr, Xe マトリックスでそれぞれ52, 37 cm-1 であり、これは計算で得られた59, 31cm-1 と良い一致を示す。一方、Xe(Ar)BeO ではBe-O 伸縮の振動数はレッドシフトし、希ガス原子を露わに取り扱うシミュレーションが振動数シフトの定量的議論に不可欠であることを示した。
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Research Products
(10 results)