2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23655004
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
服部 利明 筑波大学, 数理物質系, 教授 (60202256)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | テラヘルツ波 / 2次元分光 / 時間領域分光 / 不均一性 / フォトンエコー / テラヘルツ分光 |
Research Abstract |
2次元非線形テラヘルツ時間領域分光の一連のシミュレーション計算をおこなった。計算モデルは,すでに論文で報告した古典的振動子に基づくものであり,非線形性は,非調和性と非線形結合の2種類である。前論文では単純な1モード系の場合について,時間領域の計算のみをおこなったが,今年度は,これをi) 不均一広がりを持つ1モード系とii) 非線形モード間結合を持つ2モード系とに拡張し,それらの場合の表式を求め,それらの数値計算をおこなうとともに,時間領域のデータのみならず,それを2次元フーリエ変換することにより周波数領域の振幅および実部のデータも計算した。以上により,2次の非線形によるものと,3次の非線形性によるポンププローブ的信号およびフォトンエコー的信号の合わせて3種類のタイプの信号について,非線形性が上記の2種類,系の種類が均一1モード系,不均一1モード系2モード系の3種類それぞれについて,時間領域の信号と,周波数領域の振幅および実部の信号の3種類のデータを計算した。すなわち3 x 2 x 3 x 3 = 54種類のデータのシミュレーションをおこない,古典的振動子模型に基づく2次元非線形テラヘルツ時間領域分光信号のカタログを作成することができた。得られた時間領域および周波数領域の2次元データは,それぞれ特徴的なものであり,2次元非線形テラヘルツ時間領域分光により,これらの系の特徴が正確に取得できることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の目的として理論と実験の両面を挙げた。このうち理論については,予定を上回る成果が上げられた。実験については,準備段階である。これらを総合して,全体としての達成度はおおむね順調と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に得られた計算結果について,論文にまとめて発表する。 2次元分光の重要なターゲットであるタンパク質の詳細なテラヘルツ分光測定をおこなう。タンパク質は,生体の機能を担う重要な物質であり,その分子が生体内でどのような仕組みで機能しているのかについては,あらゆる手段で研究し理解することが必要である。テラヘルツ分光を用いると,水溶液におけるタンパク分子を取り巻く水分子のダイナミクスについて詳しく調べることができるし,また,タンパク質の機能と関わる3次構造に依存する低周波数振動モードの詳しい情報がわかる。それらのモードは一般にほとんど構造のない形状のスペクトルを有しているが,2次元分光によってその中に埋もれている一つ一つの振動モードのスペクトルを取り出すことができると期待されている。本研究では,そのような目的のために必要な分光データを集める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度当初の計画として,旅費および人件費に相当の経費を計上していたが,テラヘルツ分光実験の準備段階としてシミュレーション計算に重点を置き,それに対する物品購入に充てることで研究を実施した。次年度使用額として計上している分については,次年度研究費と合わせて,テラヘルツ分光実験に必要な実験試料,光学素子等の購入に充てる。 このほか,最終年度であるので,得られた成果について,学会発表,論文発表をおこなうための旅費等に使用する計画である。
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Research Products
(4 results)