2011 Fiscal Year Annual Research Report
光誘起トンネル電流による界面電子移動反応分子の可視化と単分子検出
Project/Area Number |
23655007
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
三井 正明 静岡大学, 理学部, 准教授 (90333038)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2012-03-31
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Keywords | 界面電子移動 / 単分子 / 光誘起トンネル電流 |
Research Abstract |
本研究では,無機半導体表面において光誘起電子移動を効率よく起こす吸着分子を,電荷分離(電荷再結合)時に基板に流れるトンネル電子を利用して可視化する"光誘起トンネル電流イメージング法"を提案し,これまで不可能であった高速電子移動を行う無蛍光性表面吸着種の検出を可能とする新規方法論の確立することを目指した。以下にその研究成果の概要を述べる。 1)単一分子蛍光分光による無機半導体界面電子移動過程の解明:代表的な金属酸化物半導体であるITO(indium tin oxide)表面をメリシン酸(CH_3(CH_2)_<28>COOH)の自己組織化単分子膜(SAM)で修飾した基板にペリレンジイミド誘導体(PDI)を吸着させ,半導体界面におけるPDIの界面電子移動(IET)に関する研究を行った。ITO表面に直接PDIを吸着させた場合には電荷分離速度が非常に速く,まったく蛍光が観測されなかった。そこでITO表面をメリシン酸SAM膜で修飾することにより反応距離を増大させ,反応速度を適度に抑制した。その結果,SAM修飾ITO基板上でPDI 1分子を蛍光検出することに成功した。PDI 1分子の蛍光強度の時間変化を計測したところ,IETに由来する非常に頻度の高い蛍光ブリンキングが観測された。この蛍光ブリンキングに対してヒストグラム法による解析を行い,蛍光がまったく観測されない持続時間off-timeの確率密度分布を求めることで単一分子の逆電子移動(電荷再結合)速度の評価を行った。その結果,べき乗則分布に従う分布が得られ,単一分子のIET反応速度が少なくと3桁以上にわたって変動していことが分かった。これは電荷再結合の反応距離に少なくとも0.7nm程度の分布があることを示しており,ITO表面の電子構造の空間不均一性が反映されたものと考えられる。 2)光誘起トンネル電流イメージング(PTCI)法の開発:酸化チタン電極にblack dyeを化学吸着させた色素増感太陽電池(DSSC)を作製し,光照射時にDSSCに流れる微弱電流をピコアンメーターで測定した。ピコアンメーターは自作のLabViewプログラムで取り込み時間を制御できるようにした。対物レンズ(NA=0.5)で励起レーザー光(631nm)を回折限界まで集光してDSSCに照射し,そのときの電流値を測定した。その結果,サブμmオーダーの局所的な光照射を行ってもμAオーダーの電流量が計測され,PTCI法によるDSSCのイメージングが可能であることが示唆された。現在,電流値の取り込み動作とアクチュエーターによるレーザースポットの二次元ラスター走査を同期させるプログラムの開発を進めており,DSSC電極表面のイメージングが可能になる直前のところまで到達している。本研究課題の期間が最短の1年間であったにも関わらず研究開始時期が5月中にまでずれ込んだことが影響し,研究期間内にPTCI法を完成させるまでに至らなかったが,電流による1分子イメージングへ向けた技術基盤を確立することができた。
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