2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23655011
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
長澤 裕 大阪大学, 基礎工学研究科, 准教授 (50294161)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 超高速分光 / 電子移動反応 / コヒーレント制御 / 非線形分光 / 核波束運動 |
Research Abstract |
フェムト秒縮退四光波混合(DFWM)によるコヒーレント振動の増幅実験を、色素(NK2990)について1-プロパノールとイオン液体中で行い、その温度依存性を室温(295 K)から10 Kまで観測した。理論的な予測によると最初の増幅極大は、DFWMの2つのポンプパルスの時間差が分子振動の半周期に一致したときに現れる。ところが実際の実験では、時間差が半周期よりも短いところで極大が生じた。また、NK2990の90 cm-1の振動モードはガラス転移点以下でブロードになることがわかった。NK2990は異性体が存在しうるフレキシブルな分子であり、ガラス転移により分子運動が抑制されることによって分子構造の不均一性が振動バンドのブロード化として観測されたと考えられる。1-プロパノール中の結果に関してはすでに論文として報告した(Photochem. Photobiol. Sci., 2011, 10, 1436)。 さらに媒質をイオン液体に変えることにより、室温においても分子振動のDFWMによる増幅が可能であることを初めて見出した。高温であるほど振動増幅の極大は短時間で現れることが確認できたので、極大の位置は熱運動によるデコヒーレンスの影響を受けているということが示唆された。今後理論計算によりこの結論を検証する予定である。 DFWMの測定にはステッピングモータを使用しているため、ひとつのデータを取得するのに長時間の積算測定が必要になる。この問題を回避するため、高速のスキャンディレイを測定系に組み込んだ。現在オッシロスコープを使用しレーザーパルスの自己相関関数を測定するため、紫外光検出用のフォトダイオードを測定系に組み込んでいる。平成24年度中に測定系を完成させ、電子供与性溶媒中の超高速電子移動反応についてのDFWM測定を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
フェムト秒縮退四光波混合(DFWM)によるコヒーレント振動の増幅について新しい知見が得られ、論文として報告もしている(Photochem. Photobiol. Sci., 2011, 10, 1436)。 測定系には高速スキャンディレイを組み込んだので、平成24年度中に本格的なDFWMの高速測定を開始する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
高速スキャンディレイをフェムト秒縮退四光波混合(DFWM)測定系への導入したので、今後これを使用した実験を行う。まず、紫外光検出感度の高いフォトダイオードを使用してパルスの自己相関関数の精密測定を行う。そしてDFWM振動増幅法の化学反応系への応用をめざす。まずは電子供与性溶媒中の超高速電子移動反応について実験を行う。具体的な系としてはジアルキルアニリン中のアゾポルフィリン、キサンテン色素等において溶媒から溶質への超高速電子移動を観測する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品としては50万円以上の備品の購入は予定していない。すべて消耗品であり、主に分光実験用の光学部品(ミラー、ホルダー、ステージ等)、試薬(アゾポルフィリン、キサンテン色素等)、溶媒(ジアルキルアニリン、イオン液体等)である。学会参加や研究打合せのための旅費その他の使用も計画している。
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Research Products
(17 results)