2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23655011
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
長澤 裕 大阪大学, 基礎工学研究科, 准教授 (50294161)
|
Keywords | 超高速分光 / フェムト秒分光 / 電子移動反応 / 電荷移動反応 / 縮退四光波混合 / 非線形分光 / 核波束運動 / コヒーレント制御 |
Research Abstract |
電子供与性溶媒であるN,N-ジメチルアニリン(DMA)にオキサジン色素やポルフィリンを融解すると、数百フェムト秒という超短時間で、溶媒・溶質間で超高速の電子移動(CT)反応が起こる。今回は、パルス幅13 fsの時間分解能で、対照溶媒の1-クロロナフタレン(1-CN)およびDMA中のオキサジン1の光励起ダイナミクスを縮退四光波混合(DFWM)分光法で観測した。1-CN中ではコヒーレントな核波束運動により信号強度が激しく変動したが、DMA中ではCT反応による100 fs以内に起こる超高速減衰成分が現れ、振動強度も弱くなった。今後これらの詳細を調べ、振動の帰属等を行っていく予定である。 さらに、DFWMの測定系にラピッドスキャンを導入し、信号取得の高速掃引(10 Hz以上)によるS/N比の改善と測定時間の短縮を試みた。本測定系では、キャビティダンプ型自己モード同期フェムト秒Cr:フォルステライト・レーザー(繰返し周波数:100 kHz)を光源とし、信号を分光器により波長分解した後、4 chデジタルオシロスコープで検出した。データ取得のトリガーは、ディレイの原点を示す信号が検出された直後のキャビティダンパーのタイミング信号を基準にし、検出ジッタを10 μs(=100 kHz)以内に収めつつ、信号のピークが揃うようにしている。このシステムで500回程度の積算を行うのにかかる時間は約2分程度であり、通常のステッピングモータ・システムで同程度のS/N比を取得するには5~10分程度かかることから、測定の高速化に成功した。 しかし、バックグラウンドに対して信号光強度が微弱な場合はオシロのデジタル変換のbit数の問題から、ロックインアンプを用いるほうが高いS/N比で測定可能となる。また、再生増幅器システムを光源とする場合、繰返し周波数は1 kHzに低下するため、さらなる改良が必要である。
|