2011 Fiscal Year Annual Research Report
極低温ラジカルーラジカル反応の多次元立体ダイナミクス研究の創出
Project/Area Number |
23655013
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
大山 浩 大阪大学, 理学研究科, 准教授 (60192522)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2012-03-31
|
Keywords | 並進冷却 / 変調磁場 / ラジカル |
Research Abstract |
本研究では、ラジカル分子線の並進冷却の一般的手法を確立し、極低温でのラジカル-ラジカル反応の多次元立体ダイナミクスの直接観測をめざした。 ラジカル種のゼーマンエネルギーの詳細な理論計算に基づき、有限要素法により非対称に空間変調された不均一磁場の設計を行った。提案した新手法の検証のために、ネオジウム磁石を用いた非対称に空間変調された不均一磁場を製作した。 試作した並進冷却装置の性能評価を、準安定ヘリウム原子を用いて行った。並進冷却装置に短パルス化した準安定ヘリウム原子線を通し、飛行時間の変化をMCPにより測定した。準安定ヘリウム原子線は、3つの磁気量子状態に対応した並進エネルギーの減加速を受けた結果、3つのピークとして観測できた。これより、量子状態に依存して分子線全体にわたって一定速度分の加低速化が実現できていることを確認できた。この結果より、本手法の有効性を確認でき、本研究課題の第一の目的を達成できたと言える。 O_2やNOなどの安定ラジカル種以外の不安定ラジカルへの状態選別と並進制御への展開を行うため、検出の容易な準安定N_2(A)の状態選別と並進制御の測定を試みた。しかしながら、現段階では、十分な分解能が得られていない。この原因として、放電により生成した準安定N_2(A)分子線の超音速冷却が十分でないため、回転状態分布が広く分布していること・パルス幅及び速度幅が広いなどが考えられる。このように安定種以外のラジカル分子系への展開への実用上の問題点として、分子線の回転状態分布の低下・初期パルス幅及び速度幅を小さくする必要があり、ラジカル線源の改良を試みている。 提案した新手法では、分子線中の速度の差により量子状態を選別できる。この特徴を利用した酸素分子や一酸化窒素のような安定ラジカル種のラジカル-ラジカル反応の多次元立体効果のマルチ同時計測法の開発も進行中である。
|