2011 Fiscal Year Research-status Report
配位子励起状態をプローブとした希土類単分子磁石自己組織化単分子膜の磁気分光測定
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23655014
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
石川 直人 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (20251605)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 単分子磁石 / 希土類 / 単一イオン磁石 / スピントロニクス / f電子 / フタロシアニン / ポルフィリン / ランタノイド |
Research Abstract |
Double-Decker型積層平面型構造をもつ希土類単分子磁石は分子面に垂直な4回回転軸に磁化容易軸を持ち、その磁気異方性は単一の分子としては例外的に大きい。本研究ではこの積層平面型希土類単分子磁石を基板上に薄膜化し、垂直磁気異方性と自発磁化が実現されるかを検証する。磁性分子の薄膜の磁性は従来の磁気測定では困難であるため、磁気光学分光法(磁気円二色性スペクトル)を用いて磁化を検出する。平成23年度は以下の二点について研究計画を実施した。(1)磁気円二色性測定光学系のセットアップ既存のJASCO社製CD分光器にOxford社製クライオマグネットを設置し、この両方を自動制御する磁気円二色性測定光学システムを構築した。インターフェイスにRS-232C、GPIBを、制御プログラムにはLABVIEWをもちいた。CD分光器は制御コード等が公開されていないため、その解析から行った。その結果、波長、温度、磁場、データ読み込みのコンピュータ制御が可能なシステムが構築できた。(2)積層型希土類単分子磁石薄膜の形成と磁気円二色性測定透過配置での磁気分光測定を行うために透明基板(ガラス)へのSAM形成が必要となる。反射配置での測定にはシリコン基板を用いる。Cook,Russellらにより報告された無金属フタロシアニンのガラス基板およびシリコン基板上SAMの形成手法(J. Mater. Chem. 1996, 6(2), 149-154)を参考にし、トリクロロシリル基を末端に持つアルキル基で周辺を修飾したフタロシアニンを合成する。これを配位子とする二層型希土類フタロシアニン単分子磁石を合成する。フタロシアニン配位子あたりの修飾基の数と位置には自由度がある。当年度はまず合成ステップ数が比較的少ない4置換体配位子で錯体を合成しSAM形成を検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)磁気円二色性測定光学系のセットアップJASCO社製CD分光器はその制御コード等が社外に公表されておらず、また他の装置との連携を可能とするようなプログラムも存在していなかったため、計画当初は別途光学系を構築する予定であった。しかし、今年度は予算の減額の可能性があったため、新規に光学系を組むことを断念し、上記分光器の制御コードを独自に解析することとし、これに成功した。この結果を基に、Labviewを用いて波長、温度、磁場、データ読み込みのコンピュータ制御が可能な磁気円二色性測定光学システムを構築した。したがって、この項目については当初の計画を達成していると考えられる。(2)積層型希土類単分子磁石薄膜の形成と磁気円二色性(MCD)測定希土類単分子磁石薄膜の透過配置での磁気分光測定を行うために透明基板(ガラス)へのSAM形成を用いた薄膜形成を予定している。しかし、その場合のシグナル強度は通常の溶液での測定にくらべて格段に小さいため、その準備として強度を十分に大きくすることが出来る高分子ドープ試料の薄膜によって測定の検討を行うこととした。いくつかの希土類単分子磁石ドープ高分子薄膜を用いた測定の結果、希土類単分子磁石においてのみ、低温でMCD強度が増大するという現象を初めて観測し、励起状態におけるπ電子系とf電子系の間の相互作用の存在を明らかにした。したがって、この項目については当初の計画の初期段階は達成していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
23年度の結果を踏まえ、24年度はトリクロロシリル基を末端に持つアルキル基で周辺を修飾したフタロシアニンを配位子とする二層型希土類フタロシアニン単分子磁石を合成し、石英基板上の自己組織化膜(SAM)についてMCD測定を検討する。Cook,Russellらにより報告された無金属フタロシアニンのガラス基板およびシリコン基板上SAMの形成手法(J. Mater. Chem. 1996, 6(2), 149-154)を参考にし、トリクロロシリル基を末端に持つアルキル基で周辺を修飾したフタロシアニンを合成する。これを配位子とする二層型希土類フタロシアニン単分子磁石を合成する。フタロシアニン配位子あたりの修飾基の数と位置には自由度があるが、合成ステップ数が比較的少ない4置換体配位子で錯体を合成しSAM形成を検討する。単分子磁石のSAM形成は上記Cook,Russellの手法を参考にして行う。石英ガラスを30%過酸化水素-濃硫酸、超純水、アセトン、THFで洗浄・乾燥し、基板として用いる。基板を単分子磁石のTHF溶液に一定時間浸潰してSAMを形成する。これについて、系統的に温度・磁場可変MCD測定を行う。これに成功した場合、次に一分子内に二つの単分子磁石サイトを有する、トリクロロシリル基修飾二核希土類単分子磁石を合成し、そのSAMのMCD測定を行う。この化合物では、サイト間磁気双極子相互作用により、ゼロ磁場での残留磁化が単核のものより大きくなることが期待される。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度配分予算は上記計画を遂行するために、合成用試薬(配位子、高純度希土類塩など)および溶媒の購入(35万円)と国際学会発表(第7回ポルフィリン・フタロシアニン国際会議、International Conference of Porphyrins and Phthalocyanines、韓国済州島)の参加費および旅費(15万円)に用いる予定である。
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Research Products
(11 results)