2011 Fiscal Year Research-status Report
生体分子の構造変化に伴う状態遷移ダイナミックスの解析手法の開発とその応用
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23655020
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Research Institution | Institute for Molecular Science |
Principal Investigator |
斉藤 真司 分子科学研究所, 理論・計算分子科学研究領域, 教授 (70262847)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2012-03-31
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Keywords | 生体分子 / 構造変化 / 状態変化 / 分子動力学シミュレーション |
Research Abstract |
Canine Milk Lysozyme(CML)はカルシウム結合リゾチーム(calcium-binding lysozyme)ファミリーに属する。CMLは、4つのヘリックス(A、B、C、D)からなるαドメイン、カルシウム結合部位と3本の反平行ベータシートからなるβドメインの2つのドメインを持つ。CMLは同じカルシウム結合リゾチームファミリーに属すα-lactalbumin(α-LA)と高い相同性をもつ。相同性の高いタンパク質は似た構造をとり、似た機能を持つと考えられてきた。 しかし、最近の実験により、CMLのMG状態では、A、Bヘリックスが安定であるが、一方、ヤギα-LA(GLA)ではCヘリックス、カルシウム結合部位がA、Bヘリックスよりも安定で、CMLのunfolding経路が他のファミリーのタンパク質とは異なることが明らかとなった。同じような構造をとるにも関わらず、なぜ異なる反応性をもつかについては、タンパク質のfolding機構、反応を理解するうえで非常に重要である。 我々はCML,GLAの二つのタンパク質のunfolding過程について分子動力学計算を行った。その結果、CMLはMG状態において、298Kと同様にαドメインにおいてB-helixを核にした安定な疎水コアを生成し、さらに、C末側に天然状態にはないヘリックスが形成され、αドメインの安定性をさらに高めていることが明らかになった。一方、GLAのαドメインの疎水性コアは298KにおいてCMLほどの安定性はなく、MG状態においてもそのような疎水コアの生成は見られなかった。以上の結果は、ローカルな相互作用の有無によってfolding/unfolding経路が変化していることを示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Canine Milk Lysozyme(CML)のunfolding過程の解析に関して、温度ジャンプによる非平衡分子シミュレーションと様々な運度での平衡系のシミュレーションを組み合わせ、unfolding過程でどのような構造をとっているかについて明らかにしつつある。 さらに、比較として、CMLと高い相同性を持つヤギのα-lactalbuminの解析も進めた。その結果、ドメイン間の安定性等が異なることが明らかになってきた。 また、状態変化を捉えるための寿命分布スペクトルの解析に関しても進めている。とくに平成23年度の後半からは、三次非線形分光法の考えを導入し、二次元寿命スペクトルの解析手法の開発を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
CMLとGLAのunfolding過程の中間状態の構造の特徴の解析をさらに進め、成果をまとめる。 また、生体分子の状態変化の解析のための一次元および二次元寿命スペクトルの解析手法を完成させる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初、データ保存用のディスク装置を購入予定であったが、タイの洪水のために、ディスク装置の購入ができなくなった。平成24年度の初めに、ディスクの購入を進め、研究を進める。
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Research Products
(6 results)