2012 Fiscal Year Annual Research Report
生体分子の構造変化に伴う状態遷移ダイナミックスの解析手法の開発とその応用
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23655020
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Research Institution | Institute for Molecular Science |
Principal Investigator |
斉藤 真司 分子科学研究所, 理論・計算分子科学研究領域, 教授 (70262847)
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Keywords | タンパク質 / カルシウム結合リゾチーム / unfolding経路 / 分子動力学シミュレーション / 構造変化 / Adenylate kinase / 粗視化シミュレーション |
Research Abstract |
Canine Milk Lysozyme(CML)はカルシウム結合リゾチームファミリーに属するタンパク質である。CMLは同じカルシウム結合リゾチームファミリーに属すα-lactalbumin(α-LA)と高い相同性をもつが、最近の実験により、CMLのunfolding経路はヤギα-LA(GLA)の経路とは異なることが明らかにされた。そこで、我々はCMLとGLAの分子動力学計算を行い、これらのタンパク質のunfolding経路の違いの起源を解析した。その結果、CMLはモルテングロビュル(MG)状態においても天然状態同様に安定な疎水コアをαドメインに形成しており、さらにC末側に天然状態には見られないヘリックスを形成することにより、αドメインの安定性を高めていることが明らかになった。一方、GLAにおいては、αドメインの疎水性コアはCMLのものよりも不安定で、MG状態においては壊れていることが明らかになった。今回の結果から、CMLとGLAの局所的な相互作用の有無がfold/unfold経路の違いを生み出していることが明らかになった。 Adenylate kinase(AK)は、ATPとAMPから2つのADPを合成する反応を触媒するリン酸基転移酵素であり、3つのドメインによって形成されている。最近の一分子蛍光共鳴エネルギー移動の実験結果から、基質が存在しない状態のAKにおいて複数の準安定中間状態が存在することが明らかにされた。そこで、我々はアミノ酸配列の特異性と局所的な柔軟性を導入した非格子型郷モデルに基づいたマイクロ秒オーダーの粗視化シミュレーションを実行し、変性状態と天然状態の間に複数の中間状態が存在することを確かめた。今後、多時間相関関数等を利用し、AKの自発的な立体構造変化に伴う状態間遷移の相関を解析する。
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Research Products
(11 results)