2011 Fiscal Year Research-status Report
放射光からの硬X線を利用した電気化学XPS測定システムの開発
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23655022
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
魚崎 浩平 独立行政法人物質・材料研究機構, その他部局等, 研究員 (20133697)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 電気化学 / 表面科学 |
Research Abstract |
XPSは、X線照射により物質表面に存在する元素を励起し、放出する光電子のエネルギーを分析することで、表面組成・表面種の酸化状態を非破壊的にかつ再現性よく評価できる手法である。従来のXPSは、媒質中における放出光電子の減衰を防ぐため、真空中で測定を行う必要があった。このため、実動作環境における触媒や電気化学条件下における電極の表面状態を観察することは不可能であった。本研究では、従来、真空中でのみ可能であったXPS測定を応用し、電気化学条件下における固液界面プロセスをその場観察できるセルの開発を目的とする。 平成23年度は、初期段階として、要素部品の設計・開発を行った。特に、本システムの心臓部である、『光電子を効率よく透過し、かつ差圧に対して高い耐久性を持つ光電子透過窓』の開発に注力した。われわれのデザインした光電子透過窓は、1.5気圧程度の気圧差では破壊されず、また、超高真空中において放射光を12時間以上照射することによっても、窓材へのダメージは認められなかったことから、この窓材は実際の測定環境でも十分利用可能であるということが実証された。窓材の光電子透過率(Kinetic Energy = 3.8 keV)は、およそ5%であった。このことは、シンクロトロン軌道放射の高輝度なX線を光源として利用する事によって、十分に解析可能なレベルの光電子スペクトルが得られるということを示している。現在、この光電子透過窓を使用したセルの作製を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
課題の申請段階で十分な予備的検討を行い、合理的な研究計画を立案した結果、当初の実験計画通り、順調に進展している。今後も引き続き、計画通りに研究を遂行する。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は、当初の計画通り、電気化学反応時におけるその場計測の実証実験を行う。前年度に開発した光電子透過窓を使用して実際にセルを構築し、電極を接続する。電位を印加し、電解質水溶液との界面における窓材表面の酸化状態変化をその場実時間で追跡する。 実証実験に引き続き、より応用的課題に展開する。具体的には、金属電極表面上における酸素還元反応メカニズムの解明に取り組む。光電子透過窓に白金やパラジウムといった触媒活性の高い金属超薄膜を形成し、これを電極として利用する。酸素還元反応が進行する電位でXPS測定することで、中間体の決定と、触媒金属の酸化状態の評価を同時に行う。 本研究では、真空中に水溶液を封じ込んだ状態で測定を行うため、万一、測定中にセルが破壊してしまうと、測定装置の故障により1億円規模の損害を生じる可能性がある。したがって、電気化学条件下でのセルの耐久性について確認しながら慎重に検討を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度の予算の大部分は測定セルの試作・開発費、その真空システムへの導入・排出機構の製作費に充てる。一般に真空部品は非常に高価であり、特注の部品を使用するため、真空部品と測定用セル工作費を合わせて、100万円を必要とする。 また、大型放射光施設(SPring-8)において実験を行うため、現地での打ち合わせを含めて年間5回程度の出張旅費が必要である。
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