2012 Fiscal Year Annual Research Report
遷移金属錯体によるフルオロアルケン類の求電子的活性化と反応制御
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23655028
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
市川 淳士 筑波大学, 数理物質系, 教授 (70184611)
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Keywords | ジフルオロアルケン / パラジウム / 触媒 / 求電子的活性化 / フッ素 / 多環式芳香族炭化水素 / PAH / 有機半導体 |
Research Abstract |
フッ素が直接置換したアルケン類は、通常のアルケン類とは異なり電子不足なため、通常のアルケンではなしえない求核種との反応が可能となる。しかし実際には、ジフルオロアルケンが極度に電子不足なため求電子的活性化剤との相互作用に乏しく、特にこれを触媒的な合成反応に活用できた例はなかった。平成23年度には、カチオン性パラジウム(II)錯体[Pd(CH3CN)4](BF4)2を触媒とし、等モル量の三フッ化ホウ素エーテル錯体を共存させることによって、ジフルオロアルケンの求電子的活性化を達成した。平成24年度には、合成化学的見地からより高活性な触媒系を開発した。触媒量の塩化パラジウム(II)と各種銀塩を組合せて用いることにより、2位にジフルオロビニル基(またはトリフルオロビニル基)を有するビフェニル誘導体の分子内Friedel-Crafts型環化が円滑に進行し、各種モノフルオロ(またはジフルオロ)フェナントレン誘導体が得られることを見出した。ここでは、出発物質のジフルオロビニル基の置換位置を選ぶことで、フッ素の置換位置が異なるクリセン([4]フェナセン)の合成に成功した。さらに、同様の環化を分子内の2箇所で同時に行うことにより、フッ素置換基を含む高次の多環式芳香族炭化水素を効率良く構築することができた。上の結果は、これまで達成例がほとんどなかったフルオロアルケン類の触媒的活性化による炭素-炭素結合生成反応を活用したものである。 なお、クリセン等の多環式芳香族炭化水素には近年、有機半導体としての関心が集まっている。フッ素置換基が有する強力な電子的効果から、フッ素が置換した多環式芳香族炭化水素は溶解度の向上や、特異なカラムナー型結晶構造をとることが予想され、本研究課題でその位置選択的合成に成功したフッ素置換誘導体には、有機電子材料としての優れた物性が充分に期待できる。
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Research Products
(9 results)