2011 Fiscal Year Research-status Report
面不斉シクロファンの立体選択的合成と高次構造化に関する研究
Project/Area Number |
23655031
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
大森 建 東京工業大学, 理工学研究科, 准教授 (50282819)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
Keywords | シクロファン / 面不斉 / スルホキシド / ポリフェニレン / C2対称性 |
Research Abstract |
シクロファンは、複数の環が"入れ子"構造を成す多環式化合物の総称である。この種の化合物は通常の環式化合物とは異なるユニークな特徴を有するため、これまでに多くの合成・構造有機化学者の研究対象とされてきた。なかでも、架橋鎖の立体束縛に由来する面性不斉の存在は、この種の化合物の特異性を示す特徴の一つであり、従来にない特異な不斉空間を提供する次世代キラルプラットフォームとして注目されている。しかし、一般にキラルなシクロファンを、光学分割に頼らずに光学活性体として得ることは難しく、このことが周辺科学の進展を大きく妨げている。そこで本研究では、これまでにない効率的な立体選択的合成法の開発を目的とし、またそれらを活かして様々な機能性シクロファンを創出し、シクロファン科学に新たな道を拓く。本年度の研究においては、軸不斉スチレンをキラル合成単位として用いたC2対称型シクロファンの立体選択的な合成を行い、さらに、これを用いてベンゼン環上に2つの架橋鎖を有 するダブルストランド型のパラシクロファン誘導体の合成に成功した。その鍵は、スルホキシド-金属交換反応により発生させたビニルアニオン種に対し、6炭素源となるア ミド誘導体を作用させ、側鎖を伸長させた点にある。そして、第一世代 Grubbs 触媒を用い、閉環メタセ シス反応を行ったころ、二重架橋型のシクロファン誘導体を収率よく得ることに成功した(E体45%、Z体23%)。さらに、二重結合の水素化、MOM 基の除去およびトリフラート化を順次行い、ビストリフラートへ導いた。このして得られた化合物は今後、そのポリフェニレン化を検討するための重要なモノマーユニットとして利用可能である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究において、計画した2重架橋型(ダブルストランド型)光学活性シクロファンの合成に成功した。これにより、本研究課題の目的のひとつである。対象化合物の合成経路の開拓を行うことができたことになる。また、これまでの研究成果を活かして最終的に目的とする光学活性シクロファンの高次構造化を行う道筋が立てられた。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度の検討により得られた知見を活かし、今後は効率的な合成研究を推進するべく、まず鍵となる合成中間体の大量合成を行う。その後、得られた化合物を用い、その高次構造化を集中的に検討し、目的とする化合物の合成経路の開拓を行う。また、合成した化合物については、随時その物性評価を行い、本研究で目的とした新規機能性化合物の開発に繋げる。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
合成主体の研究であることから、そのほとんどを試薬および溶媒の購入費用とする。また、硝子器具等も必要に応じ適宜購入する。
|