2011 Fiscal Year Research-status Report
ロタキサンキラリティーは有効な不斉場となりうるか?
Project/Area Number |
23655032
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
高田 十志和 東京工業大学, 理工学研究科, 教授 (40179445)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ロタキサン / 分子不斉 / 動的不斉 / 光学分割 / 超分子化学 |
Research Abstract |
ロタキサンキラリティーは従来の不斉中心や不斉軸、不斉面といった概念で規定できない、構造上の自由度が高いために動的な性質を持つといった新しい不斉場を提供しうる。本申請研究ではロタキサンキラリティーのもつ価値や意義、すなわち空間的広がりやその程度を定め、その有用性を明らかにする事を目的として、まずは不斉場の評価のために動的らせん高分子のキラリティーにロタキサンキラリティーを転写して評価を行った。最も単純な [2]ロタキサンを側鎖にもつポリアセチレンを合成し、その高次構造を各種スペクトルにより評価した。軸成分の末端に重合性官能基としてエチニルフェニル基をもち、様々な置換基を導入した非対称クラウンエーテルを輪成分にもつロタキサンモノマーを合成した。最終的にキラルHPLCにより光学分割して得られたエナンチオマーをロジウム触媒存在下重合してポリアセチレンを得た。光学活性なモノマーのCDとらせん構造のCDを比較したところ、置換基のサイズや水素結合能の違いにより、らせんの安定性の違いが観察された。これらの検討から輪成分の非対称性が大きくなる程不斉場の影響がらせん上に強く反映されるということが明らかとなった。また輪成分が主鎖近傍に近づかないとらせんのキラリティーは誘起されないことから、コンポーネント間の交点付近の空間全体に不斉場が存在していることが確かめられた。これらの検討によりロタキサンキラリティーの不斉場に関する基礎的な特性の一部が解明されたと同時に、ポリマーの高次構造にロタキサンキラリティーを応用したという観点からも得られた成果の意義は大きい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ロタキサンキラリティーの本質解明に向けて、初年度の目標として三つの項目を掲げ検討を行ってきた。(1)動的不斉ロタキサンの合成と光学分割 および (2)ロタキサンキラリティーによる重合とらせん高分子の構造制御:一連の分子不斉ロタキサンを合成し、ポリアセチレンのらせん構造に与える影響について検討を行った。置換基の導入位置、置換基のサイズ、水素結合サイトの種類などの影響について調べ、効果的な不斉場の構築にむけてのある一定の知見を得ることができた。また不斉場の影響はコンポーネント間の交点付近に構築されており、ポリアセチレン主鎖近傍に輪成分が近づくと、らせんのキラリティーがロタキサンの不斉場に応じて誘起されることを確かめた。同様な効果はポリアセチレンの分子不斉ロタキサン含有率の低い共重合体や、ポリ(m-フェニレンジエチニレン)の側鎖に導入した場合にも得られることが分かり、ロタキサンキラリティーは構造上の自由度が高いにもかかわらず、有効な不斉場を提供しうることを検証できた。(3)モノマーの結晶構造解析:単結晶構造解析により、絶対立体配置の特定を目指し、点不斉官能基を導入した輪成分を用いてロタキサンジアステレオマーを合成、光学分割に成功した。ジアステレオマー生成時には不斉選択性は見られなかったが、単結晶の作成と結晶構造解析と併せてジアステレオマーの不斉合成についても検討を進める。以上の成果については現在学術雑誌への論文投稿に向けて論文執筆中である。本研究の目的達成に向けておおむね当初の計画に従って進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
1) 動的不斉ロタキサンの重合とらせんキラリティーの評価:対称な軸とエチニルフェニル基を有し、非対称なクラウンエーテルから合成されるロタキサンを光学分割し、各々重合して得られるポリアセチレンのらせんキラリティーを評価する。不斉場の中心となる輪成分は主鎖近傍に固定されるが、コンポーネント間の相対位置を外部刺激により任意に動かすことで、不斉の大きさや異方性などを変化させることができるので、このときのポリアセチレンのらせん構造への影響について精査する。2) モノマーの結晶構造解析:単結晶構造解析により絶対立体は位置を決定するために、立体既知な不斉点を導入したジアステレオマーの合成と結晶構造解析を検討する。併せて様々な不斉官能基を導入してジアステレオマーの不斉合成も検討を行う。3) ロタキサンキラリティーの不斉認識ロタキサンキラリティーを不斉合成することは、対称な軸成分や非対称性の低い軸成分を含むロタキサンでは、輪成分が移動する際のポテンシャルエネルギーの差がないために、エナンチオ選択性はほとんど得られないであろうことは容易に想像される。しかし、らせん高分子では不斉を増幅することができ、らせん高分子の側鎖をCs対称な輪成分が包接する時に隣接基とのパッキングにより、Matched pairならばらせん構造を安定化するために、輪成分の環平面選択性が得られて不斉認識されると期待している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額に記した金額については、すでに3月中旬に発注・納品薬品費であり、年度末につき支払いが終了していない分である。これらの金額については新年度の支払いに含める。また、今年度も引き続き合成中心の研究計画であるため、申請額の多くを薬品・試薬等の消耗品として使用する。薬品費については価格変動はあるものの、代表者研究室における毎月の薬品使用料等の平均値を割出し、これを基に算出した。また、不斉反応に着手するにあたり、低温高温反応装置の購入を計画している。これに加えて、研究成果報告および情報収集を目的とした学会参加のための学会参加登録費および学術誌への論文投稿にかかる費用も旅費およびその他として計上した。
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[Presentation] ゴムと硫黄の化学
Author(s)
高田十志和
Organizer
第51回ゴム技術入門講座(招待講演)
Place of Presentation
日本消防会館(東京)
Year and Date
平成23年6月26日-28日
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