2011 Fiscal Year Research-status Report
重合活性末端における分子内関与を利用した立体規則的カチオン重合の開発
Project/Area Number |
23655039
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山子 茂 京都大学, 化学研究所, 教授 (30222368)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
Keywords | 立体選択的反応 / カチオン反応 / カチオン重合 / 分子内関与 / ブロック共重合体 |
Research Abstract |
本年においては、立体規則的重合の基礎となる想定反応機構を小分子系のモデル実験により検証を行うとともに、究極の目的である立体規則的なリビングカチオン重合に向けた有効なリビングカチオン系の開発について検討した。 小分子系のモデル実験においては、重合末端に生じるカチオン種に分子内関与できる置換基として、エステルおよびアミドとを持つビニルエーテルH2C=CHOCH(R)CHCO2R’およびH2C=CHO CH(R)CHCONR’R"をオレフィン基質(モノマー)として合成して用いた。反応落ちしては、リビングカチオン重合の素過程を模倣した反応を行った。すなわち、ビニルエーテルに対してハロゲン化水素(HX)を付加させることで、まずヘテロアセタールを合成した後、ルイス酸とモノマーモデルであるアリルシランを加えることで、炭素―炭素結合生成反応を行い、この時における立体選択性、反応効率を最大化する検討を行なった。その結果、基質として適当な置換基を持つエステル基質から生成したヘテロアセタールに対し、種々の銀塩を作用させて基質を活性化した後、アリルシランを加えることで90%以上のジアステレオ選択制で反応が進行することがわかった。 新しいリビングカチオン重合の開発においては、我々がラジカル重合系で用いている有機テルル化合物を用い、適切な開始剤の分子デザインと活性化剤であるルイス酸の選択により、ビニルエーテルの重合がリビング的に進行することを明らかにした。さらに、リビングラジカル重合と子のカチオン重合とを組み合わせることで、従来法では合成できなかった、新しいハイブリッドブロック共重合体が合成できることを明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記の結果に加え、種々の予備的検討結果からも、反応が予想していたような分子内関与を経て進行していることが強く示唆されている。このような形で立体選択性が発現することはこれまで全く報告例がないことから、現状では順調に研究が進行しているものと考えている。現在、生成物の構造確認中であり、それにより「原理の証明」を早急に達成したいと考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
次の第一の課題は、本反応系を重合反応に展開することである。その検討を早急に進めたい。さらに、リビングカチオン重合系への展開についても併せて検討する。この場合、これまで我々が開発してきたテルル化合物を重合制御剤に用いる方法をまず検討するが、その方法にこだわらず、ハロゲン化合物やエーテルやチオエーテルなど、他の研究者により既に開発されているリビングカチオン重合系の検討も併せて行い、立体規則性と分子量、分子量分布の制御されたポリビニルアルコールおよびその誘導体の合成へと発展を図る。 さらに、リビング系の特徴を活かし、機能性高分子材料の宝庫として期待されているブロック共重合体の合成へと展開を図る。ここで開発したモノマーと、従来から用いられているビニルエーテルとを組み合わせることで、ステレオグラジエント共重合体やステレオブロック共重合体の合成について検討する。生成物におけるエーテル部位を除去することで、対応するポリビニルアルコールへと変換を行なう。高い立体規則性を持つポリビニルアルコールは強い分子内水素結合ネットワークを形成することから、従来のものと大きく異なる物性を示すと期待される。そこで、合成した重合体の基礎的な物性の評価を行う。 さらに、これらの得られた結果を取りまとめ、成果発表を行う。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品費として、試薬やガラス器具などの消耗品として80万円(1点平均5,000円x 160点)、成果発表の出張旅費として20万円(1件平均50,000円x のべ4回)、成果とりまとめ費用として10万円の使用を予定している。
|