2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23655044
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
宇野 英満 愛媛大学, 理工学研究科, 教授 (20168735)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 近赤外色素 / BODIPY / 有機太陽電池 / 近赤外フィルター / ペリ環状分解反応 |
Research Abstract |
近赤外利用有機太陽電池作成に必要な近赤外光を吸収する高共役化合物を創出するために、具体的な以下の課題化合物群を設定し、奥島准教授、森助教と協力して、高共役化合物前駆体の合成をおこなった。高共役化合物前駆体の熱反応性、光反応における波長依存性、結晶構造と分解特性、置換基と酸化還元特性との関係を重点的に検討し、最終でペリ環状分解反応を用いて目的の高共役化合物の合成を達成した。得られた高共役化合物は、三菱化学および山田准教授(奈良先端大)と協力して太陽電池としての性能、JSRおよび日本触媒と協力して近赤外特性を評価している。具体的には以下の3つの課題について検討した。課題(1): ベンゼン連結ビスBODIPYの共役拡張: 760 nmに最長極大吸収をもつベンゼン連結BisBODIPYの合成にはすでに成功していた。この化合物にベンゾ縮環させて共役を拡張して、最長極大吸収を近赤外領域にシフトした化合物の合成に成功した。この物質の最長極大吸収波長は、848nmに達した。さらにこの色素は可視域ではほとんど吸収のない透明な近赤外色素であることも判明した。これら色素に可溶性置換基や、電子吸引性基を導入することに成功した。現在これらの物質を高分子ポリマーに分散させて性能を検討している。課題(2):テトラフルオロイソインドールを組み込んだBisBODIPYの合成と物性評価: 申請者の開発したテトラフルオロイソインドール誘導体の合成法を用いて、テトラフルオロイソインドールを組み込んだBisBODIPYの合成をおこなった。この化合物は安定ではあるが、溶解性に乏しいため、可溶化基の導入が必須であることが分かった。課題(3):課題(1)~(2)であげたBODIPYのメソ位に置換基を有する誘導体の合成: メソ位置換基としてペンタフルオロフェニル基、4-t-ブチルフェニル基、3,5-ジ-t-ブチルフェニル基を検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
課題(1)として挙げた「ベンゼン連結ビスBODIPYの共役拡張」では、760 nmに最長吸収波長を有するベンゼン連結BisBODIPYの共役を拡張して、840nm以上に最長吸収波長をもつ BisBODIPYの合成に成功した。このBisBODIPY色素の最長吸収波長帯の裾野は、760nm以上であり、完全に近赤外領域の吸収帯であった。これらの成果は現在論文投稿中である。しかし、この分子は不溶で、高分子分散性及び耐酸化性も悪かった。そこで、課題(3)で挙げたようにこの分子骨格に様々な置換基を導入したところ、溶媒分散性に優れかつ耐酸化性のあるBisBODIPYの合成に成功した。この成果については特許申請を行った。課題(2)のテトラフルオロイソインドールを組み込んだBisBODIPYの合成と物性評価については、目的化合物の合成に成功し、物性を検討した。この化合物では、耐酸化性については向上していたが、高分子分散性については改善の余地があった。現在は、さらなる誘導体化を目指している。以上のように、目的を達成したのみならず、高機能を持った物質の創出に成功し、特許申請まで行えたことで、当初の計画以上に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度に合成に成功した化合物の近赤外フィルターや近赤外利用太陽電池特性を検討するとともに、新たな課題として(1)ベンゼン連結TrisBODIPYの合成と物性評価および(2)新規π拡張様式を有するBisBODIPY色素の創出に挑戦する。 近赤外フィルターとしての機能については、JSRと日本触媒の協力のもとさまざまな色素の薄膜化と分散化を検討する。当研究室で行ってきた、前駆体合成法では、平面の広いπ電子系を有する化合物でも、前駆体法を駆使することにより合成できることを示してきた。課題(1)については、これまでの前駆体法を用いることにより達成できると考えている。前駆体としては熱による逆Diels-Alder法および光による脱カルボニル法の両方を検討する。課題(2)については、効率よくπ電子系を拡張できるアセナフテン骨格の導入を考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本プロジェクトでは、化合物合成に多大な費用と時間がかかる。このため大半の経費は試薬などの消耗品とアルバイトの人件費として支出する予定である。得られた成果は、まず特許として権利化したのち、論文や学会発表で社会に還元してゆく予定である。
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Research Products
(7 results)