2012 Fiscal Year Annual Research Report
新分子リチウム内包フラーレンを配位子とする遷移金属錯体化学の開拓
Project/Area Number |
23655046
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
飛田 博実 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (30180160)
|
Keywords | リチウム内包フラーレン / 遷移金属錯体 / 化学修飾 / 多核錯体 / 分離精製 / 動的挙動 / NMRスペクトル |
Research Abstract |
(1)前年度の成果として,東京大学 松尾 豊特任教授との共同研究によりカチオン性リチウム内包フラーレン上への有機基導入とその分離精製方法を確立した.本年度は有機金属錯体を導入するためカチオン性リチウム内包フラーレン上へのアリール基の五重付加の検討を行った.銅錯体存在下アリールグリニャール試薬との反応を試みたが,反応は複雑な混合物を与え,五重付加体の単離には至らなかった.質量スペクトルでは,アリール基が複数導入された化合物のピークが観測されたため,反応は進行したものと考えられる.しかし,空のフラーレンとは異なり単一の化合物にならなかったことは,カチオン性リチウム内包フラーレンの酸化還元挙動が空のフラーレンとは異なるため,反応制御が行えなかった可能性を示唆している. (2)カチオン性リチウム内包フラーレンに金属フラグメントが多数結合した多核錯体の合成を検討した.トリフェニルホスフィン配位子をもつVaska錯体との反応では,錯体を過剰量用いても単核錯体のみしか得られなかったが,メチルジフェニルホスフィンまたはジメチルフェニルホスフィン配位子をもつVaska型錯体との反応では二核錯体が得られた.また,トリメチルホスフィン配位子をもつVaska型錯体を過剰量反応させることにより,六核錯体が得られた.二核錯体の7Li NMRスペクトルを測定したところ,単核錯体でシャープに観測された内包リチウムのシグナルは室温でブロードに観測され,低温にすると複数のシャープなシグナルへと変化した。この溶液中での動的挙動は,2つのイリジウムフラグメントがフラーレン上の多数のC=C結合間で素早く移動し,2つのフラグメント間の相対的位置が異なる複数の異性体間の交換が起こることに起因すると考えられる。このことから,金属フラグメントの結合位置により,内包リチウムの環境を変化させることが可能であることが示された.
|