2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23655049
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
岡村 高明 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (90252569)
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Keywords | 生物無機化学 / 酵素モデル / 水素結合 / タングステン / モリブデン |
Research Abstract |
23年度は、タングステン・モリブデン酵素の一つで二酸化炭素をギ酸に還元するギ酸デヒドロゲナーゼ(FDH)モデルとして、1,2-ベンゼンジチオラートの3,6位に非常に嵩高いアシルアミノ基を導入した配位子を用い、モノオキソタングステン(IV)錯体、ジオキソタングステン(VI)錯体、モノスルフィドモリブデン(IV)錯体を合成に成功した。本年度は、当初の研究計画に従い、(1)モノセレニドモリブデン(IV)錯体、(2)デソキソモリブデン(IV)錯体の合成を検討した。モノセレニドモリブデン(IV)錯体は、極めて不安定で錯形成を示唆する結果は得られたが、単離には至らなかった。従って、より活性が高く不安定なモノセレニドタングステン(IV)錯体の合成や二酸化炭素との反応は断念した。しかし、デソキソモリブデン(IV)錯体は単離に成功し、X線結晶解析により構造を決定した。この錯体は、モノオキソモリブデン(IV)錯体のオキソ配位子をシリル化することで得た。この錯体は、FDHと類似構造を持つDMSO還元酵素(DMSOR)モデルと見なせる。DMSORの基質でもあるトリメチルアミン-N-オキシドをトルエン中で加えると瞬時に反応し定量的に酸化型のモデルとなるモノオキソモリブデン(VI)錯体を与え10時間以上は安定であった。無置換のベンゼンジチオラートを配位子に持つデソキソモリブデン(IV)錯体は、反応性が低く酸素原子移動反応が完結しない上、生成物の分解が見られた。本研究で合成したデソキソモリブデン(IV)錯体は、反応性の低いDMSOとも非常にゆっくりと反応し、ジメチルスルフィドを与えた。興味深い事に、本錯体はミセル水溶液中でも安定であり、水溶性金属酵素の活性部位周辺の疎水的空間や反応を制御する水素結合を再現することで、反応性を向上させ、反応性の低い酵素本来の基質を還元できる良い機能モデルであると言える。
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Research Products
(21 results)