2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23655050
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
小野田 晃 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (60366424)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 金属タンパク質 / 多核金属錯体 / 鉄二核中心 / 人工タンパク質 / 酸化反応 |
Research Abstract |
本研究では、タンパク質マトリクスを活用し、非天然二核金属中心を有する生体触媒の構築を目的とする。第一配位圏の合理的な配位環境の再構築によって、二核鉄中心を有する酸化反応触媒を創製する。金属タンパク質触媒は、水中の温和な条件下でも高活性な次世代型触媒の候補であり、生物無機化学、触媒化学、タンパク質科学の研究者が近年勢力的に参入してきている。これまでの研究は、天然酵素の単核金属中心を機能改変する、あるいは、単核金属錯体をタンパク質内に包接した系がほとんどである。一方、生体ではメタンの酸化を行うメタンモノオキゲナーゼや水素分子の酸化還元するヒドロゲナーゼのように、タンパク質二核金属中心が、物質循環の鍵となる反応を触媒している。 その重要性にも拘わらず、二核中心を含めた多核コアの人工生体触媒の人工機能化の研究は黎明期である。本年度は、シンプルかつ強固な4本へリックス構造のタンパク質マトリックス内に非天然の二核金属中心の構築し、触媒反応への適用を目的としており研究を実施した。具体的には、オキソ/ヒドロキソ架橋された二つの鉄イオンに5つのヒスチジンが配位し、アスパラギン酸とグルタミン酸のカルボキシル基が架橋したヘムエリスリンと同様の二核鉄の配位アミノ酸及び近傍のアミノ酸変異体を調製し、その発現と機能解析を行った。その結果、酸素等の外部配位子との結合挙動が異なるI119E 変異体を見いだした。この変異体が過酸化水素を酸化剤、グアイアコールを基質とした酸化反応において、野生型にはない反応性を有する事を見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究では、タンパク質マトリクスを活用し、非天然二核金属中心を有する生体触媒の構築を目的とする。 本年度は、第一配位圏の再構築によって、二核鉄中心を有する酸化反応触媒を創製に着手した。具体的には、メタンの水酸化反応を触媒するメタンモノオキシゲナーゼが持つ、タンパク質中の4本ヘリックスに囲まれた鉄二核が活性部位と、基質を導くチャネルに着目し、酸素運搬体ヘムエリスリン (Hr) に類似したDcrH-Hrタンパク質の鉄二核中心の反応性を調節し、酸化活性をもつ酵素への変換を目指した。そこで、オキソ/ヒドロキソ架橋された二つの鉄イオンに5つのヒスチジンが配位し、アスパラギン酸とグルタミン酸のカルボキシル基が架橋したHrと同様の二核鉄の配位アミノ酸及び近傍のアミノ酸変異体を調製し、その発現と機能解析を行った。ヒスチジン118番をアスパラギン酸に置換した変異体、非配位性のイソロイシン119番を配位性アミノ酸残基であるヒスチジン、グルタミン酸へと置換した変異体等の改変タンパク質を作製した。その結果、酸素等の外部配位子との結合挙動が異なるI119E 変異体を見いだした。この変異体のアジドやフェノールとの結合モードを紫外可視吸収とラマン分光測定により調べたところ、I119E変異体において導入したグルタミン酸のカルボキシラートが二核鉄に直接配位しているか、または二核鉄の配位水分子に水素結合している可能性が示唆された。さらにこの変異体は、過酸化水素を酸化剤、グアイアコールを基質とした酸化反応において、野生型にはない反応性を有する事を見出しており、当初計画以上に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
目的とするタンパク質の変異体における機能改変において、当初計画以上の成果が得られており、引き続き変異体の調製に加えて、その構造解析と機能解析を進める予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究を進めていく上で必要に応じて研究費を執行したため当初の見込み額と執行額は異なったが、研究計画に変更はなく、前年度の研究費も含め、当初予定通りの計画を進めていく。
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