2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23655053
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
小江 誠司 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60290904)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 光合成 / ヒドロゲナーゼ / モデル錯体 / 電池 |
Research Abstract |
・新規高安定型ヒドロゲナーゼの探索と単離 水素酸化菌には80 ℃以上の超高温から低温まで幅広い温度範囲で生育する様々な種がある。その中には、80 ℃以上の超好熱性菌由来のヒドロゲナーゼ遺伝子が低温性菌に水平伝播されたユニークなものが存在する可能性がある。その低温性菌由来のヒドロゲナーゼは低温から超高温条件(20-90 ℃)まで高活性を示す高安定型酵素である可能性が非常に高い。 ヒドロゲナーゼは燃料電池の触媒や水素エネルギーの生産などにその利用性が期待される。しかし、ヒドロゲナーゼの利用面において最も厄介なのはその活性の不安定性である。特に水素発生型ヒドロゲナーゼのほとんどは、酸素や一酸化炭素に暴露すると短時間で失活してしまう。本年度は、低温から超高温条件まで高活性を示し、また、酸素に暴露しても酵素活性が阻害されない高安定型ヒドロゲナーゼを保持する新規な生物資源の検索・単離を行い、新規高温性ヒドロゲナーゼの培養・選択に成功した(Citrobacter sp. strain S-77)。本成果について、現在論文投稿中である。・ヒドロゲナーゼ活性化状態モデルジヒドリド錯体の合成 本年度は、ヒドロゲナーゼ活性化状態モデルである6配位ニッケルジヒドリド錯体の合成に世界で初めて成功し、その構造をX線構造解析により同定した。さらに、ジヒドリド錯体からの水素発生反応メカニズムを明らかにした。本研究成果を論文にて発表した(Angew. Chem. Int. Ed. 2011, 50, 10578)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
九州は火山と温泉が多く存在する土地であるため、高温で生息する好熱性水素酸化菌を探索するには最適である。また、好熱性菌を探索しやすい土地であることは、80 ℃以上の超好熱性菌由来のヒドロゲナーゼ遺伝子が低温性菌に水平伝播されたユニークなもの(「9.研究実績の概要」の項目に記載)の探索も比較的しやすい。このような地の利を生かし、高安定性ヒドロゲナーゼの探索を円滑に進めることができた。そのようにして探索・単離・培養した水素酸化菌から単離・精製したヒドロゲナーゼから得られた様々な情報を基に、モデル錯体の設計・合成を行うことができたため、研究は順調に進展した。
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Strategy for Future Research Activity |
・アノードとして新規高温性光合成細菌電極及びそのモデル錯体電極の作成 酸素発生型光合成には水分子を酸化し酸素分子を発生する光化学系II酸素発生複合体(PSII)がある。その酵素を基盤上に固定し、循環型光酵素電池を作製するためには高安定性/高活性のPSIIを保持する新規な光合成生物の単離が必須となる。至適生育温度57 ℃を示す好熱性シアノバクテリア(藍色細菌)が、現在まで最も安定なPSIIとして知られている。高安定型酵素電池の特徴は低温から高温まで、また広いpH範囲においても高活性を示すものが理想的である。本年度は、様々な特殊環境から高安定なPSIIを保持する光合成生物資源の検索・単離と新規高温性光合成細菌の採取・単離・活性測定を行う。また、光合成の活性中心である酸素発生タンパク質複合体(oxygen-evolution complex: OEC)の構造を範にしたOECモデル錯体を合成する。・カソードとアノードの機能確認 アノードの電極触媒及びカソードの電極触媒としての機能を調べるために、アノード及びカソードに白金カーボンが塗工されたカーボンクロスを用い発電実験を行う。高分子膜(ナフィオン)を、両側から白金カーボンが塗工されたカーボンクロスで挟み、膜電極接合体(MEA)を作製する。このMEAをセルに組み込んで電池を作製する。なお、本電池では、アノード及びカソードにおいて、バルカン(Cabot社製)及びアイオノマーとしてのナフィオンを含有させる。・光合成モデル電池を作成 作成したカソードとアノードを連結し、最終目的である「光合成モデル電池」を組み上げる。エネルギー循環電池を作製し、発電評価実験を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
光合成モデル電池を作製し、その反応メカニズムを解明するためには、18-水(シグマアルドリッチ、1g、156,000円)、重水(Wako、10 g、3,300円)のような安定同位体が不可欠である。安定同位体を中心に、研究を進めるにあたって必要な錯体合成試薬やガラス器具等の購入を予定している。また、電極作製のために、カーボンブラック(Cabot社製、バルカン)、電解質膜(シグマアルドリッチ、1枚、Nafion(R) perfluorinated membrane, Nafion(R) NRE-212, thickness 0.002 in、50,600円)、電解質(シグマアルドリッチ、100 mL、Nafion(R) perfluorinated resin solution, 20 wt. % in lower aliphatic alcohols and water, contains 34% water、79,500円)、カーボンクロス(東陽テクニカ)等の購入を予定している。 国内外での研究成果の発表のために、旅費を計上する。
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