2011 Fiscal Year Research-status Report
光機能化したランタニド錯体の創製:光駆動型窒素-窒素三重結合切断への挑戦
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23655054
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
中井 英隆 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70377399)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 合成化学 / 光物性 / ランタニド / 窒素固定 / 有機金属錯体 |
Research Abstract |
本研究は、光機能化したランタニド錯体を用いて、光によって駆動する新たな物質変換に挑戦するものである。具体的には、最近申請者らが開発した「集光配位子:吸光係数の高い縮合多環式芳香族基を導入したペンタメチルシクロペンタジエニル(Cp*)配位子」を用いて2価のランタニド錯体を合成し、光エネルギーとランタニド錯体自身が持つ窒素分子との親和性を利用して、難易度の高い窒素分子の窒素-窒素三重結合(N≡N)の切断反応の開拓を目指すものである。平成23年度は、実施計画に沿って、先行実験で合成に成功していた「ナフチル基を導入したCp*を配位子とするサマリウム二価錯体」の性質を調べた。その結果、錯体合成時にサマリウム二価中心に強固に配位するテトラヒドロフラン(THF)を、錯体をトルエンに溶解させるだけで容易に取り除くことができることを見いだした(通常は、高真空下、加熱処理する必要がある)。また、この溶媒に誘起される現象が、サマリウム金属中心とCp*配位子に導入したナフチル基との珍しい「金属-πアレーン相互作用」に由来していることを明らかにした。すなわち、集光機能を期待して配位子に導入したナフチル基が、その電子的・立体的な特性によって、「窒素との相互作用が期待できるTHFフリーのサマリウム2価錯体」の生成にも寄与できることを明らかにした。以上の結果は、新規な溶媒応答性の有機金属錯体を構築するための新規方法論を提供したという点においても価値のあるものであり、学術誌(Dalton Trans.)に速報として発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実施計画に沿って、先行実験で合成に成功していた「ナフチル基を導入したCp*を配位子とするサマリウム二価錯体」の基礎的な性質を明らかにし、その成果を学術論文にまとめることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
研究を次のステップへと進め、窒素分子との相互作用や光照射の効果等を調べる。また当初の計画通り、平成24年度は平成23年度に得られた知見をもとに、新規錯体分子を設計・合成する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の計画通り、直接経費(700千円)を「物品費(300千円)、旅費(300千円)、謝金(100千円)」の配分で使用する予定である。
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Research Products
(2 results)