2012 Fiscal Year Research-status Report
光機能化したランタニド錯体の創製:光駆動型窒素-窒素三重結合切断への挑戦
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23655054
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
中井 英隆 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70377399)
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Keywords | 合成化学 / 光物性 / ランタニド / 窒素固定 / 有機金属錯体 |
Research Abstract |
本研究は、光機能化したランタニド錯体を用いて、光によって駆動する新たな物質変換に挑戦するものである。具体的には、「集光配位子」を用いて反応活性なランタニド錯体を合成し、光エネルギーとランタニド錯体自身が持つ窒素分子との親和性を利用して、難易度の高い窒素分子の窒素-窒素三重結合(N≡N)の切断反応の開拓を目指している。平成24年度は、実施計画に沿って、ペンタメチルシクロペンタジエニルおよびトリアザシクロノナンから誘導できる集光配位子を開発するとともに、開発した配位子を用いて種々のランタニド錯体を合成し、それらの光物性・反応性を調べた。その結果、「ピレニル基を導入したトリアザシクロノナン誘導体」を集光配位子とするガドリニウム錯体が、特異な光物性を有することを見出した。すなわち、このガドリニウム錯体が示すピレニル基由来のリン光を、室温で観測することができ、さらにそのリン光が光で誘起できることを明らかにした。通常、低温にして初めて観測できるリン光が室温で見られるだけでも珍しく、そのリン光を光で誘起できたことは驚きに値する。得られた結果は、光によって駆動する物質変換系を構築する上での重要な知見となる。さらに、X線構造解析の結果から、この集光配位子を用いれば、ランタニド錯体としては珍しい7配位構造が構築できることがわかった。7つの配位座のうち1つは、置換活性な溶媒分子が占めており、「ターゲットとする基質である窒素分子との相互作用」が期待できる。現在、窒素分子との反応性を中心に検討している。上記成果および本研究遂行に伴い派生した成果は、1件の特許出願および1報の学術論文としてまとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実施計画に沿って、平成23年度に得られた知見をもとに、ペンタメチルシクロペンタジエニルおよびトリアザシクロノナンから誘導できる集光配位子を開発するとともに、開発した配位子を用いて種々のランタニド錯体を設計・合成した。合成した新規錯体の特異な光物性を明らかにし、その成果を特許として出願した。また、本研究遂行に伴い派生した研究成果を、1報の学術論文としてまとめた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度に合成した錯体の窒素分子との反応性を明らかにし、研究を次のステップへと進める。また、これまでに得られた知見をもとに、新規錯体を設計・合成し、目的とする「光駆動型窒素-窒素三重結合の切断」に挑戦する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の計画通り、直接経費(700千円)を「物品費(200千円)、旅費(300千円)、謝金(100千円)、その他(100千円)」の配分で使用する予定である。
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Research Products
(3 results)