2011 Fiscal Year Research-status Report
鉄錯体を触媒とする不飽和炭化水素へのヒドロリン化反応の開発
Project/Area Number |
23655056
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
中沢 浩 大阪市立大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (00172297)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
板崎 真澄 大阪市立大学, 理学(系)研究科(研究院), 講師 (60382032)
亀尾 肇 大阪市立大学, 理学(系)研究科(研究院), 特任講師 (50597218)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | ヒドロリン化反応 / 鉄錯体 / 触媒反応 / ダブル付加反応 |
Research Abstract |
遷移金属錯体触媒を用いた炭素-炭素不飽和結合へのP-H結合の付加(ヒドロリン化)反応の報告は、ヒドロホウ素化反応やヒドロシリル化反応に比べて極めて少ない。これはHPR2のリン上の孤立電子対が触媒活性種に配位して触媒能を阻害するためである。本研究では鉄錯体が孤立電子対の配位による反応阻害を受けにくいという我々の得ている知見をもとにして、鉄錯体を触媒としたヒドロリン化反応の実現を目指した。 Cp(CO)2FeMeを触媒前駆体として用いてHPR2とHC≡CPhを反応させると、(R2P)H2C-CHPh(PR2)が生成することを見出した。C≡C結合にP-H結合が2回付加するダブルヒドロリン化反応は今までに報告例がなく、鉄錯体を触媒として達成できることを本研究で初めて明らかにすることができた。アルキンに対して5モル%の鉄錯体を用いても94%のアルキンがダブルヒドロリン化された。この反応は有機溶媒中で行うとほとんど進行せず、アルキンやホスフィンと言った基質を溶媒として用いることにより効率よく進行する。種々のアリールアセチレンに対してダブルヒドロリン化反応が進行する。しかし、アルキルアセチレンや内部アルキンに対しては全く反応が進行しないことが分かった。Cp(CO)2FeMeとHPPh2を当モル量反応させることによりCpFe(CO)(PHPh2){C(O)Me}を単離した。この錯体もダブルヒドロリン化反応の触媒となることが分かった。これよりCp(CO)2FeMeのFe-Me結合にCOが挿入してアセチル基となり、空いた配位座にPHPh2が配位することにより触媒反応が進行することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
鉄錯体触媒を用いてアルキンのヒドロリン化反応を達成したのに加えて、前例のないダブルヒドロリン化反応が触媒的に進行することを見出した。また、反応中間体に相当する鉄錯体を単離することができ、触媒反応サイクルを考える上で大いに参考となった。
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Strategy for Future Research Activity |
より高い活性を示す触媒の探索を行う。その際、理論計算を行い、その結果をもとにして新しい触媒の設計を行っていく。また、現段階ではアリールアセチレンに対してはダブルヒドロリン化反応が進行するが、アルキルアセチレンに対しては何故か反応が進行しない。そこで、今後はアルキルアセチレンに対しても活性を示す触媒の開発に取り組んでいく予定にしている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は当初の予定通り、物品費に200,000円、旅費に300,000円、人件費・謝金に600,000円を使用することを計画している。
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