2012 Fiscal Year Annual Research Report
鉄錯体を触媒とする不飽和炭化水素へのヒドロリン化反応の開発
Project/Area Number |
23655056
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
中沢 浩 大阪市立大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (00172297)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
板崎 真澄 大阪市立大学, 理学(系)研究科(研究院), 講師 (60382032)
亀尾 肇 大阪市立大学, 理学(系)研究科(研究院), 特任講師 (50597218)
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Keywords | ヒドロリン化反応 / 触媒反応 / 鉄錯体 |
Research Abstract |
遷移金属錯体触媒を用いた炭素-炭素不飽和結合へのB-H結合の付加(ヒドロホウ素化)反応、及びSi-H結合の付加(ヒドロケイ素化)反応は広く研究されており、実用化もされている。しかし、P-H結合の付加(ヒドロリン化)反応はほとんど知られていない。これはHPR2のリン上の孤立電子対が触媒活性種に配位して触媒能を阻害するためである。本研究では鉄錯体が孤立電子対の配位による反応阻害を受けにくいという我々の得ている知見をもとにして、鉄錯体を触媒としたヒドロリン化反応の実現を行った。 アルキンにP-H結合を1つもつホスフィン(2級ホスフィン)を2当量以上反応させて、ダブルヒドロリン化反応の実現を目指した。種々検討の結果、鉄メチル錯体であるCpFe(CO)2Meを触媒量(5 mol%) 用いて、フェニルアセチレンと2倍当量のジフェニルホスフィンを110℃で加熱したところ、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)-1-フェニルエタンがフェニルアセチレンに対して94%の収率で生成した。この反応は、アルキンに対して2回のヒドロリン化反応が起こった初めての例である。また、この反応が遷移金属錯体、特に鉄錯体を触媒として実現可能であることを示した意義は大きい。反応の適応範囲を調べたところ、アルキンとして末端アリールアルキンのダブルヒドロリン化反応は触媒的に進行するが、末端アルキルアルキンおよび内部アルキンに対しては反応しなかった。また、2級ホスフィンとしてジアリールホスフィンを用いると反応は上手く進行するが、ジアルキルホスフィンは反応しないことが分かった。 触媒反応機構の検討も行い、16電子種であるCpFe(CO)(PPh2)が真の触媒活性種と推測した。この錯体にアルキンが反応してまずシングルヒドロリン化生成物(ホスフィノエチレン)が生じ、これがさらにヒドロリン化される段階的反応機構を提案した。
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