2011 Fiscal Year Research-status Report
単分散マイクロバブルを利用した連続分離システムの構築
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23655063
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
関 実 千葉大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80206622)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 真澄 千葉大学, 工学(系)研究科(研究院), 特任准教授 (30546784)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 分析化学 / マイクロ流体素子 / マイクロ・ナノデバイス / マイクロチップ / 水力学的ろ過 / マイクロバブル / バイオセパレーション / 生物化学工学 |
Research Abstract |
本研究では,マイクロ流路内の気泡を利用した連続分離システムを構築することを目標に,本年度は主に以下の3点の検討を行った。(1)単分散微小気泡(直径1~数十um)の連続的かつ安定的な生成条件の解明:ポリジメチルシロキサン(PDMS)を用いたソフトリソグラフィーによるレプリカモールディング法によって作製した微細流路に,気相と液相を導入し,発生した気泡流れを倒立型(蛍光)顕微鏡下で高速度ビデオカメラを利用して記録し解析した。その結果,液相および気相の流路バランスを最適化することにより,直径16-38 um程度の安定な単分散気泡流れの生成条件を見出した。(2)液相と気泡の接触時間と溶質分子・粒子の界面吸着量の関係の解明:分離対象のモデル分子として,負電荷を有する色素メチルオレンジを選択し,吸着の選択性の制御には,正電荷を有する界面活性剤臭化セチルトリメチルアンモニウムを用いて,両者の静電的な相互作用を利用した分離を試みた。その結果,界面活性剤を含有する気泡流れ側で,色素が約10%濃縮されることが見出された。この結果は,提案した原理による分離が実現可能であることを示している。しかしながら,濃縮が十分に進んでいない原因として,気液界面積および接触時間の不足が考えられるため,さらに検討する必要がある。(3)HDF法による液相中からの気泡の分離・濃縮挙動の解明:安定な気泡の生成と分離のためには,流路表面の濡れ性の制御が重要で,シラン処理等が有効であることを見出した。一方,界面活性剤による界面活性の変化によって,気泡の変形し,一部の気泡がリークするために,完全な気泡分離が困難となることも明らか何なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度に検討することを計画した3つの課題すべてに取り組み,いずれも,一定の成果を挙げることができたという意味では,おおむね順調に進捗していると言える。より具体的には,単分散気泡の流路内での安定的な生成条件を明らかにしたこと,モデル分子としての色素の濃縮挙動を明らかにしたこと,および,流量と気泡サイズと気泡の分離条件を明らかにしたことである。これらの結果によって,提案した原理による分離手法の実現可能性が示されたということもできるので,ここまでは,おおむね順調に進展していると考えられる。しかしながら,提案した方法による分離の効率は,未だ低い値に留まっており,本方法の特徴を十分に生かした成果が出たとまでは言えない。分離の効率の低さの原因についても明確にできたとまでは言えないので,次年度以降の検討課題となる。気泡の生成については,一定の範囲の大きさ(直径16-38 um程度)では,安定した条件を見出しているが,今回のモデル系に関しては,接触界面積を増大させるために,さらに小さな気泡の生成条件を探索する必要が示されたことになる。また,気泡の生成と分離の機構についても,十分に理解できているとは言えないので,さらに直径の小さな気泡を安定的に生成し,接触時間も,現在より長く安定化させる必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の検討から明らかになった分離の効率を上げるための課題の解決に取り組む必要がある。分離対象の物質と界面の接触時間および,接触界面積が十分でないことが問題であるので,気泡径を減少させ,気泡の数を増やし,滞留時間を延長することを試みる。気泡径を減少させるためには,ノズル構造の縮小化が必要で,PDMSデバイスで作製可能な範囲のものかは定かではない。また,滞留時間を長くするためには,流路を延長すると同時に,流路幅を増大させて,流速を低下させる必要があるが,そのような条件で,生成した微小気泡が安定的に存在し続けるのかどうかは不明である。一方で,気泡分離の機構の検討を進め,小径の気泡でも安定的に分離できる条件があるのかを検討する必要もある。今回利用したモデル分子では,界面活性剤と対象分子の相互作用が分離機構の根本にあるために,界面活性剤の量が分離量を決定することになるが,分離された対象分子を気泡内に取り込むような揮発性気体の系,あるいは,気体の疎水性のみを利用したタンパク質の分離系なども試みる必要がある。同時に,気泡よりも広範な条件で安定的な作製が可能な単分散液滴を利用して,類似の分離システムを構築することも試みる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
23年度に得られた結果で不十分であった点を踏まえて,まず,分離効率を上げるための,分離対象の物質と界面の接触時間および,接触界面積の増大を試みる。流路構造の変更,ならびに,流量条件の変更に解決できれば,その条件で,分離効率の検討を行う。また,気泡の生成と分離の安定性に関わる因子の定量的な検討を行い,小気泡の分離,生成気泡の安定性の検討を行う。これらのためには,PDMSデバイスの流路デザインの変更だけでなく,デバイス材料の変更が必要となるかも知れない。また,引き続き,23年度に利用したモデル分離系の条件の最適化も図るが,同時に,他の分離アプリケーションの探索も行う。例えば,対象を界面活性のあるタンパク質として,分析のための濃縮だけでなく,除タンパクのような分析の前処理としての利用も検討する。また,ガス相に蒸発する揮発性の溶質として,VOCのような有機溶媒などを対象とすることも検討する。逆に,気相から液相への溶解に基づくガス相の特定成分の濃縮の可能性もある。加えて,気泡の代わりに連続の単分散液滴のフローを利用した分離システムの可能性についても検討を加え,本提案手法の問題点とその解決の可能性に関する知見を得る。
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Research Products
(5 results)