2011 Fiscal Year Research-status Report
磁気泳動による単一微粒子電子スピン共鳴検出法の開発
Project/Area Number |
23655066
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
諏訪 雅頼 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (90403097)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 磁気泳動法 / 電子スピン共鳴 / マイクロ粒子 / 磁化率 / 常磁性 |
Research Abstract |
平成23年度は、電子スピン共鳴を磁気泳動法により観測することに重点を置き、以下三点について研究を実施した。1.電子スピン共鳴観測に適した磁場勾配の作成を行った。一対の永久磁石(表面磁束密度0.5T)と鉄片(5mm x 10mm x 3mm)を用いて1mm程度の鉄片ギャップ間に大きな磁場勾配を作成した。磁場の値は観測領域で、0.6~0.9Tの幅を持つように磁石と鉄片の位置を調節した。2.マイクロ波発生用電極の作成した。Agilent Technologies社N5183Aによりマイクロ波(0.1GHz - 20GHz、最大160mW)を発生させた。その伝送は、主に同軸ケーブルを用い、放射は2枚の平板電極を用いた。磁気泳動を観測するキャピラリーを2枚の電極で挟み静磁場とマイクロ波磁場が垂直になるよう配置した。3.磁場勾配下にある常磁性微粒子にマイクロ波を照射し、どのような泳動挙動が観測されるかを調べた。試料としては有機溶媒(2-フルオロトルエン)中に分散した塩化マンガン水溶液(1M - 2M)の液滴を主に用いた。マイクロ波の周波数は20GHz(共鳴磁場0.72 T)を選んだ。磁場が0.72Tとなる位置では、磁場勾配も大きな値であることが、磁場測定により分かった。マイクロ波を照射しながら液滴の磁気泳動を観測すると、照射していないときに比べて、共鳴位置付近で泳動速度が小さくなった。これは、電子スピン共鳴によりマンガンイオンの電子スピンの方向が変化し、20%程度磁化率が小さくなったためであると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成23年度はとにかく電子スピン共鳴を、磁気共鳴により観測することを目的として研究を行った。実験では、マイクロ波照射による磁気泳動速度の低下が、共鳴磁場の位置でのみ観測されたため、電子スピン共鳴が観測されたと考えられ、本年度の最低限の目標はクリアした。しかしながら、磁化率の低下に関して、常磁性イオンの濃度や液滴のサイズ、マイクロ波の出力に関する依存性の調査が未だ行えていない。従って、やや遅れていると自己評価せざるを得ない。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は、前年度に行うことが出来なかった、泳動速度の低下における常磁性イオンの濃度や液滴のサイズ、マイクロ波の出力に関する依存性の調査を行う。ただしマイクロ波が同軸ケーブルと平板電極の接点で非常に弱められている可能性があるので、導波管から放射されるマイクロ波をそのまま利用することを考えている。これにより、マイクロ波の試料位置でのパワーは非常に大きくなると予想される。また、より大きな磁場勾配を利用するため、超伝導磁石も利用する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度にマイクロ波発生器を購入したため、本年購入するものは全て消耗品である。異なった照射法を試すため、導波管や同軸ケーブルなどが必要であり、研究費の60%以上をこれに費やす予定である。また、5月と9月に開催される分析化学討論会と日本分析化学会年会で成果発表および情報収集に赴く予定である。
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