2011 Fiscal Year Research-status Report
紫外光電子放射を利用する大気下仕事関数イメージング装置の開発
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23655075
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
文珠四郎 秀昭 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 放射線科学センター, 教授 (80191071)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 表面分析 / 紫外光電子 / 仕事関数 / イメージング |
Research Abstract |
平成23年度は、下記に示すような機能を持った紫外光電子顕微イメージングシステムを構築し、その基本性能のテストを行った。高輝度型重水素ランプを光源とし、紫外光の集光効率が最も高いUV反射型対物レンズを用いて集光し、試料表面に照射、このとき試料表面から放出される光電子を対物レンズの先端に取り付けた金メッキ正電極にて電流として検出することを試みた。紫外線の減衰をできるだけ抑えるため、光学系にはレンズ類を用いない設計とした。試料表面からの光電流検出には電源内蔵ピコアンメータを用いた。システムの制御にはパソコンを用い、XYステージの制御、光電子電流データの収集などを行う簡単なプログラムを作成した。また、同時に観察用CCDカメラを装置に組み込み、試料表面の光学画像を取得できるシステムを構築した。試作した紫外光電子イメージング装置を用いて、仕事関数が小さく光電子放出量が大きいと考えられる金属アルミニウムからの光電子電流を検出することができた。試料と光電子検出電極間の電圧、その距離との関係などを詳細に調べ、本装置の稼働のための最適実験条件を決定した。この条件を用いて、試料表面を自動XYステージを使用して走査し、各測定点での照射紫外線による光電子電流を観測することにより、大気下での紫外光電子放射能イメージングを試みた。顕微鏡で確認できる凹凸などを反映した大まかなイメージングが可能であることがわかった。しかし、紫外線の集光面積が約30マイクロメートル程度と大きく、当初の目標である10マイクロメートル以下を達成できなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
紫外励起光電子電流の大気下での検出と光電子の放出量によるイメージングについて、ほぼ目標通りの性能を持つシステムを構築することができた。しかし、イメージングにおける光電子平面分解能については、10マイクロメートル以下を目指していたが、照射紫外線の試料表面での実測の直径は30マイクロメートルであり、十分な分解能が得られているとは言い難い。複数のピンホールを組み合わせることにより照射径をできる限り小さくする改良が必要である。ただし、この場合には照射紫外線量は減少してしまうため、光電流をさらに効率良く検出する必要があると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
H23年度に作成した測定システムを改良し、紫外線の分光器を含む大気下仕事関数イメージングシステムを構築する。具体的には、高輝度重水素ランプからの紫外線を分光器を用いて単色化し、これを反射型対物レンズにて集光し、試料表面に照射する。試料表面から放出される光電子は、電流として電源内蔵ピコアンメータ用いて検出する。分光した紫外線では電流の検出感度が十分ではないと考えられるため、ロックインアンプを用いて高感度検出を試みる。紫外線照射位置を固定して照射紫外線の波長(エネルギー)を掃引し、光電子放射スペクトルの測定を行う。紫外線波長は、200nmから400nmの間で掃引する。これは約6eVから3eVのエネルギーに対応する。光電子放射スペクトルの1/2乗プロットの切片から仕事関数を求めることができる。2波長の紫外線を用いて光電子放出イメージングを行い、2つの画像に対し、上記の1/2乗プロットに対応する数値処理をすることにより、仕事関数のマッピング画像を得ることができる。これにより光電子放出能イメージングでは得られない仕事関数画像を得ることができると考えられる。分光器を用いるシステムにおいて、照射光量が少なくなり光電子電流検出が困難となる場合には、複数の紫外線バンドパスフィルターを用いて照射紫外線の分光を行う。測定試料としては、仕事関数が小さく、光電子量が多いと考えられるアルミニウムやニオブ金属試料、大気中で安定な金などを用いて、仕事関数イメージの測定が可能であることを確かめる。次に微小な傷や凹凸をもつ金属、酸化層の厚みの異なる金属や半導体試料、超伝導加速器材料であるニオブ表面については異物やシミのある試料を対象として、イメージングを行う。得られた実験結果をまとめ、紫外光電子放射を用いた大気下仕事関数イメージング法の表面分析法としての有用性を示す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平面分解能を向上させるための紫外線照射光学系の改良と分光器あるいは紫外線バンドパスフィルターを用いた照射系の構築のために光学部品を購入してこれを用いる。また、光電子電流の高感度精密測定のための電子部品類、試料台などの加工に必要な金属、試料として用いる金属類も購入する必要がある。また、研究成果の発表、紫外線照射系の設計に関する情報を収集するための旅費を計上した。
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