2011 Fiscal Year Research-status Report
マイクロ・ナノバブルを用いた金属フリー過酸化水素合成による不斉酸化反応の開発
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23655079
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
間瀬 暢之 静岡大学, 工学部, 准教授 (40313936)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | マイクロナノバブル / 過酸化水素 / 金属フリー / 気-液反応 / 気-液-固反応 / 酸化反応 / 還元反応 / アントラキノン法 |
Research Abstract |
全化学プロセスの30%に達するとされる酸化反応を安全・クリーン・低エネルギーで進行させることは、生産性・安全性を向上し、消費エネルギーの削減につながることから、持続可能な社会を構築する上で重要である。過酸化水素は原子利用効率が高く (47%)、副生成物が水だけのクリーンな酸化剤であるが、その効率的な生成法の確立が強く望まれている。過酸化水素の主な工業的合成法として、アントラキノン法が利用されている。この手法のメリットは高濃度の過酸化水素を合成できることであるが、鍵反応である接触水素化の工程は気相-液相反応であるため、従来法では加熱、高圧条件を必要としてきた。また、コスト低減のため一度に大量の過酸化水素を合成することが望まれるが、貯蔵、運搬が必要となり、安全面を考慮すると爆発性の過酸化水素を高濃度で大量に保有するリスクは避けるべきである。本研究では気液界面を効率的に増大させるマイクロナノバブルに着目し、マイクロナノバブルを用いた気相-液相反応により、常温・常圧下、その場 (オンサイト)での過酸化水素合成を検討した。アントラキノン法での過酸化水素合成について、水素雰囲気下 (Balloon)、水素バブリング (Bubbling)、水素マイクロナノバブル (Micronanobubble)の3種類の気体導入手法について比較検討を行った。その結果、マイクロナノバブル発生装置を用いた場合、2倍の反応性で過酸化水素を生成した。これはマイクロナノバブルを系中に発生させることで、cm-mmバブリングよりも液相中に高度に水素が分散、溶解し、溶存水素濃度が増加したと考えられる。高い溶存水素濃度を維持したことにより、アントラキノンの接触水素化反応が促進され、続くアントラヒドロキノンの自動酸化工程を経て生成される過酸化水素の収率が向上したと推察される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の全体構想である「極めて環境負荷が低い次世代型酸化反応の確立」をするために、初期の本研究開発のポイントは大きく二つあり、ステージI: マイクロナノバブルの過酸化水素生成への活用ステージII: 生成した過酸化水素の酸化反応への活用、基質一般性・反応適応性の拡張である。まずはこの二つのポイントに焦点を絞り、本手法の優位性を確立する必要があり、当該年度において、(a) マイクナノバブル発生装置の改良、(b) マイクロナノバブルの過酸化水素生成への活用 を検討した。その結果、マイクロナノバブル手法の優位性が確認された。具体的には、アントラキノン法での過酸化水素合成において、水素雰囲気下 (Balloon)、水素バブリング (Bubbling)、水素マイクロナノバブル (Micronanobubble)の3種類の気体導入手法について比較検討を行った結果、マイクロナノバブル発生装置を用いた場合、2倍の反応性で過酸化水素を生成した。さらに、触媒量を検討した結果、10 mol%のときに最も高い収率(84%)で過酸化水素が合成された。また、固定化された触媒を用いているため、触媒の回収が容易であり、触媒の繰り返し利用を検討した結果、4回再利用しても反応性の低下は観測されなかった。以上の結果より、当初の予定通り、本研究課題はおおむね順調に発展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、マイクロナノバブル発生装置を用いた接触水素化、続く空気酸化を、流路の切り替えによりワンポットで行い、過酸化水素を合成する。その後、反応後の溶液に水を加え、マイクロナノバブル発生装置を用いた液-液抽出を行う。さらに、生成した過酸化水素水を有機反応へと活用し、基質一般性・反応適応性の拡張を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の計画において、生成した過酸化水素を有機反応へと活用することから、合成反応用試薬・触媒、反応・精製用有機溶媒、有機合成用ガラス器具の購入に研究費を充当する。また、マイクロナノバブル発生装置の配管・バルブの最適化を行い、安全性・効率性の高い過酸化水素発生システムの構築に研究費を使用する。
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