2011 Fiscal Year Research-status Report
キラルな分岐型有機金属反応剤を用いる立体特異的クロスカップリングの開発
Project/Area Number |
23655082
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大村 智通 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00378803)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 合成化学 / 結合形成 / 立体化学 / 遷移金属触媒 / 有機ホウ素化合物 / 立体特異的反応 / 炭素ー炭素結合形成 / 不斉合成 |
Research Abstract |
不斉炭素中心での炭素ー炭素結合形成において、立体化学の反転・保持を自在に制御可能な触媒反応を確立し、キラル分子のジアステレオマーを立体相補的に合成する有機合成方法論の創出を目的として研究に取り組んでいる。交付申請書研究実施計画に記載した「研究項目1.完全な立体保持で進行するB-アルキル鈴木ー宮浦カップリングの開発」において、光学活性なα-(アセチルアミノ)ベンジルボロン酸エステルと臭化アリールのカップリング反応を、様々な添加剤の共存下検討した。添加剤を共存させないと立体反転を伴って炭素ー炭素結合形成が進行するのに対し、ホウ素やアルミニウム、チタンのアルコキシドを共存させ反応を行ったところ、立体保持で反応が進行し、特にジルコニウムテトライソプロポキシド・イソプロピルアルコール錯体を用いた場合に最もエナンチオ特異的かつ立体保持でカップリング生成物が得られることが明らかとなった。さらに詳細について検討を行ったところ、ホウ素反応剤の窒素上のアシル基がアセチル、プロピオニル、ベンゾイル、ピバロイルと嵩高くなるにつれ添加剤の効果が弱くなることや、反応温度が低いほどエナンチオ特異性が高くなることが明らかとなった。一方で、プロトン酸性の添加剤は立体反転を誘起し、特にフェノールの共存下で反応を行うと、ほぼ完全な立体反転を伴って反応が進行することも明らかとなった。本反応の立体化学は、触媒サイクルのトランスメタル化段階で決定され、窒素上のアシル基のホウ素上への分子内配位が立体反転の主要因と考えられるが、金属アルコキシドはアシル基の配位を受けこの分子内配位を妨げる効果によって立体化学の切替を誘起しているものと考えられる。炭素ー炭素結合形成反応において、このような添加剤による立体化学の相補的制御は例がなく、キラル分子のジアステレオマーの簡便なつくり分けを実現する強力な合成手法への展開が期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
完全な立体保持で反応を進行させる条件を確立するには至らなかったものの、反応の立体化学を決定づける要因についての基盤的知見を得ることができ、単一のエナンチオマーから両方のエナンチオマーを高度につくり分ける顕著な添加剤の効果を見出すことができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
交付申請書研究実施計画に記載した「研究項目2.B-アルキル鈴木ー宮浦カップリングに適用可能なホウ素反応剤の拡張」を実施するとともに、ここで得られる知見を基に「研究項目3.立体特異的B-アルキル鈴木ー宮浦カップリングの有機合成的応用:ジアステレオマーの立体相補的合成」について検討を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
試薬やガラス器具等実験消耗品の購入が見込みよりも若干少なかったため、次年度に使用する研究費が生じた。本研究費は次年度の実験用消耗品購入に充てる。
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